中国経済の回復、短期的に大歓迎だが...あとが怖い
さて、ハードルが低い「5.0%前後の成長率」を中国は達成できるのか。「過度な期待は禁物だ」と注意を呼びかけるのは、第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏だ。
西濵氏のリポート「習政権3期目・ゼロコロナ終了後初の全人代を経て中国経済は? ~今年の経済運営は『安定』重視、目標実現のハードルは低いが過度な期待を抱くことは禁物か~」(3月6日付)によると、中国経済の期待と不安要因は、整理すると次のようなものがある。
(1)当局による性急なゼロコロナ終了で、経済の混乱が景気の足かせとなった。だが、年明け以降、企業マインドは製造業・サービス業ともにPMI(購買担当者景気指数)が、好不況の分かれ目である「50」以上を回復するなど、底入れしている【図表1】。
(2)今年の成長率目標「5%前後」は、ハードルを比較的低く設定されており、過度な政策支援に動くことはない一方、目標実現に向けた安定を重視したと捉えられる。
(3)足元の世界経済は、欧米などの景気頭打ちが懸念されるなか、中国の景気底入れ期待が追い風となることは間違いない。しかし、中国の商品市況の上振れが世界的なインフレ要因となり、新たなリスクになりうる。
(4)さらに中国人民銀行(中銀)は、景気下支えの観点から金融緩和を実施しており、金融市場では「カネ余り」状態にある。
(5)中国国内では株式や一部の不動産でのバブル再燃などのリスクもくすぶる。若年層の雇用回復が遅れており、消費の復活が高所得者層にとどまる可能性もある。
(6)こうした点を考えると、世界経済は短期的には中国景気の回復期待に負うことが見込まれるが、「その後」の展開を見据えると、過度に期待を抱くことは難しいことに留意する必要がある。