どうなる中国経済? ウォール街衝撃、全人代の低すぎる成長率目標「5%」...エコノミストが指摘「景気回復は世界経済の一時の喜び、後のリスクが怖い」

報告から消えた李克強首相の「独自色」あるキーワードの数々

北京市の天安門広場
北京市の天安門広場

   今後の経済政策について、李克強首相の報告が例年になく内容が乏しかったことに懸念を示したのが、大和総研主席研究員齋藤尚登氏と、研究員中田理氏だ。

   2人はリポート「全人代も習一色、李克強氏の影響力は即排除 2023年の政府成長率目標は超過達成を前提に『5%前後』に設定」(3月6日付)のなかで、面白い分析を試みている。

   ときには習近平氏のブレーキ役・調整役を果たした李克強首相は、習近平一色体制になった全人代を最後に、一線を引くことは確実だ。それもあってか、李克強首相の政府活動報告の中には、2023年に関する言及が極端に少なかった。これまでの李克強氏の経済政策には、独自色のある次の5つのキーワードがあった。

(1)「合理区間」=成長率を合理的な範囲にコントロールする。
(2)「簡政放権」=政府の関与・介入の縮小や権限移譲。
(3)「精準」=財政・金融政策は的を絞り精確に、ばらまきはしない。
(4)「大衆創業」=大衆による創業。
(5)「万衆創新」=万人によるイノベーション。

   そして、李克強氏が2014年から今回(2023年)の全人代で行なった報告の中で、これらのキーワードが出た回数を計算したのだ。すると、過去にはほとんどのキーワードが(最高では12回も)登場したのに、今回は「精準」が2回登場しただけで、それ以外のキーワードは「排除」された。

中国経済の中心、上海市街地
中国経済の中心、上海市街地

   齋藤氏と中田氏は、

「李克強氏の影響力は、首相退任とともに即時排除されることが示唆されていよう」

   としている。

   さらに、2023年の政府成長率目標は、前年比5.0%前後に設定された。昨年が当初目標は5.5%に設定されながら、同3.0%にとどまったことを考えると、今年はその反動が期待できるはずだ。この控えめな目標は、

「2023年は2年連続の目標未達成は許されず、超過達成を前提にやや低めの政府成長率目標が設定された可能性がある」

   として、

「新首相発表後にどのようなテコ入れ策が発表されるのか、注目したい」

   と結んでいる。

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