衰退する消防団...初の2万人以上減少、70万人台に 報酬引き上げも期待通りとはいかず 災害活動での出動は増えているのに(鷲尾香一)

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   地域コミュニティの中核的な存在でもある消防団の衰退が止まらない。

   2022年度の団員減少数は前年度比で2.6%も減少し、初めて前年度比で2万人を超える減少となった。全団員数も初めて70万人台まで減少した。

1990年に100万人を、2007年に90万人を割る 2019年度以降は、毎年1万人以上減少

   消防庁は毎年4月1日現在の消防団の状況について発表しており、2022年12月20日に2022年度の「消防団の組織概要等に関する調査」の結果を公表した。

   調査結果によると、2022年4月1日時点の消防団員数は78万3578人で、前年度比で2万1299人(2.6%)も減少した。

   消防団員数は1950年代前半には200万人以上いた。しかし、1956年に200万人を割り込むとその後も減少は止まらず、1990年には100万人を、2007年には90万人を割り込んだ。直近10年間で2019年度以降は毎年度1万人以上団員が減少しており、累計で9万615人も減少している。(表1)

   団員数の減少に伴い、5000以上あった消防団も1957年には5000を割り込み、1961年には4000を、2004年には3000を割り込んだ。2022年度の消防団数は2196で前年度比2団減少した。ここ10年間で解散した消防団数は38に上り、2000団割れが刻々と近づいている。(表2)

   団員数減少の背景には、毎年の退団者数が高止まりしている半面、入団者数の減少が加速していることがある。

   2022年度は入団者数が3万3445人だったのに対して、退団者数が5万4744人と大きく上まわった。ここ10年間では入団者数が46万3021人に対して、退団者数は55万8792人に上る。(表3)

   特に、20歳代の入団者数が約4割、30歳代が約2割減少するなど、若年層の入団者数減少が顕著となっており、近年は入団者数の減少に拍車がかかっている。

   こうした団員減少への対応策として、女性団員と学生団員の増強を図っており、女性団員は2022年度に2万7603人、学生団員は5706人となっている。しかしながら、直近10年間で女性団員は7494人の増加、学生団員は3371人の増加と、団員数減少に対しては焼け石に水の状況だ。

準公務員と位置付けられている「消防団」 消防庁、団員の報酬引き上げを自治体に要請

   「消防団」は自治体により認定されたボランティアのような存在だ。消防署が常設の消防機関であり、消防吏員(消防官・消防士)は消防学校を卒業した地方公務員であるのに対して、消防団員は普段は別の仕事をしている住民が消防活動を行う。

   ボランティアのような存在とは言いながら、消防団員は「非常勤特別職地方公務員」という準公務員と位置付けられている。このため、その活動については、出動手当、年額報酬などの報酬が支払われている。

   そこで、団員数減少対策と切り札として、2021年4月に消防庁は団員の報酬引き上げについて、条例改正等に取り組むよう市町村に要請した。これにより、多くの自治体では消防団員の報酬が引き上げられたが、それでも消防団員の減少に歯止めはかからない。

   消防団員が実際には年に一度も消火活動を行うこともなく、それでも年額報酬や訓練に出動手当が支払われることに批判的な見方もあるだろう。

   だが、消防団は火災のための出動だけではなく、風水害等の災害活動への出動が増加している。たとえば、この10年間で、火災のための出動は2割以上減少しているが、災害のための出動は2.5倍以上に増加している。

   特に、消防署が近隣にない地域では、消防団は消火活動だけではなく、災害活動でも重要な役割を担っているのだ。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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