私が前職で勤務していたリクルート社(R社)は、新しいビジネスを生み出したい...と考える風土のある会社で有名です。こうした風土が起業家輩出につながっていると考えられています。
が、もうひとつ影響していると感じたことがあります。それは、営業職が取引先との関係で「取引先の事業支援もするべき」と認識していたことです。
事業支援は、取引先の理解度・信頼関係の向上につながる
たとえば、求人メディアの営業であれば人事部にメディアの提案をして、成果を出すことが仕事と考えるだけではダメ。自分なりに考えて、取引先の売上拡大に貢献すべき。その意識があり、実行に移すことが営業としての重要な取り組みと考えられていました。
こうした事業支援は取引先の理解度・信頼関係の向上につながる、将来的には自社サービスの拡大につながるからやるべき...と考えられていました。
自分も取引先の事業支援を行ったことが何回もありました。たとえば、ある小売業で売上が伸びないとの悩みを社長から聞いたので、20代向け新商品を起案。その企画を考えるにあたって、社内でアンケートやグループインタビューを実施。商品化が実現して、売上拡大に貢献したことがありました。
でも、それくらい当たり前。過去の諸先輩の伝説は、そんなものではありませんでした。 その代表が、関西を拠点とした某アパレルメーカー。当時は女性向けのブランドだけしかありませんでしたが、その頃は少子化前で子供の人口が増加傾向。新たな事業の機会としてR社の営業担当が「子供服事業」を起案。具体的なロゴやプロモーションプランまで作成して、事業承認を得ました。
伝説のような事業支援をした人は大半が起業、成功へ
もはや、事業開発コンサルのような仕事ぶりですが、費用をいただいたわけではなく、手弁当で取り組んだようです。
とはいえ、何も得ることがなかったわけではありません。この子供服ブランドで新規店舗のスタッフを大量に募集することになり、その採用支援で数億円の新規取引が始まることになったようです。それから、ついには社内で専任チームを立ち上げるまでになったと聞いています。
こうした、事業支援による成功体験=伝説が積み重なり、営業は当たり前のように取り組んでいたように思います。
ただ、事業支援で取引先に感謝されるくらいの成果につなげるためには、それなりの準備=知識が必要。成功に向けて、本業だけでなく、事業計画・マーケティングと幅広い知見を備える準備を行う必要があります。
こうした準備こそが、起業を考えるきっかけになっていたように思います。伝説のような事業支援をした営業の方々は大半が起業して、それなりの成功を収めていったからです。
起業のきっかけは新規事業の企画だけでなく、日常の仕事の延長線のなかにも潜んでいるのです。(高城幸司)