子どものいる家庭への支援をもっと簡単に、迅速に! 新たに「子ども基礎保証」を計画中
このように、充実しているように見えるドイツの子育て支援ですが、まだまだ課題はあります。
不安定な社会情勢や経済的な危機を受け、ベルテルスマン財団の最新の報告によると、ドイツに暮らす子どもの5人に1人が貧困のリスクにさらされているそうです。
貧困は、学力やその後のキャリアの格差につながり、貧困の連鎖を生んでしまうということは日本でも周知の事実です。
親の貧困が子どもや若者の貧困につながるという構造的な問題を解決するため、ドイツ連邦政府は、「子ども基礎保証(Kindergrundsicherung)」新設に向けて議論を進めています。
児童手当や追加児童手当、住居手当など、ドイツでは生活保護の手前にさまざまな支援がありますが、議論が進む「子ども基礎保証」では今までバラバラだった子育て世帯向けの給付金や支援を一本化し、手続きの簡易化を図ろうとしています。その中には、デジタルプラットフォームを通じて、貧困のリスクのある家庭に自動的に給付できるようにするというアイデアも含まれています。
税法をはじめ多くの法改正が必要になるため、「子ども基礎保証」の導入は早くても2025年になるようですが、問題はやはり財源。
「子ども基礎保証」の重要性と緊急性を訴えているリザ・パウス家庭相に対し、クリスチャン・リントナー財務相は難色を示しています。世論は、パウス家庭相を後押ししているようですが、この議論がどのように進展していくのか、ドイツで子どもを育てる一人として目が離せません。
コロナ危機や、陸続きの場所で続いている戦争を経て、親が安心して子どもを育てられる社会だと信じられることが、今を生きる家族にとってはもちろん、社会全体にとっても大事なことだと実感します。(高橋萌)
【プロフィール】
高橋 萌(たかはし・めぐみ)
ドイツ在住ライター
2007年ドイツへ渡り、ドイツ国際平和村で1年間の住み込みボランティア。その後、現地発行の日本語フリーペーパー「ドイツニュースダイジェスト」に勤めた。元編集長。ドイツ大使館ブログでは「ドイツ・ワークスタイル研究室」を担当。サッカー・ブンデスリーガ大好き。日本人夫とバイリンガル育児に奮闘中。
Twitter: @imim5636