注目集まる!2023年度「税制改正大綱」 住宅売買&相続関連事項に、大きな変化...専門家が解説(中山登志朗)

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   LIFULL HOME'S総研の中山です。

   まもなく4月、新年度の始まりですが、「2023年度(令和5年度)税制改正大綱」では、住宅売買・所有および相続に関連する事項に大きな変化があります。

   今回は、その改正点を解説しますので、情報をしっかりアップデートしてほしいと思います。

◆2023年4月から変わる「税制改正」、注目すべきポイントは?

   最初に、住宅ローン減税の制度について、触れておきましょう。

   2022年度から引き続き変更がありませんが、2024年度からは新築住宅について住宅性能の高さに応じて積み増していた住宅ローン元本が引き下げられることが、すでに決まっています(例:ZEH住宅は元本上限が4,500万円から3,500万円になります)。

   なるべくお得に新築住宅を購入したい、もしくは、ご家族に新築住宅を購入させたい、とお考えの方は今年中に購入することをお勧めします。中古住宅については、2025年度まで現行の制度が維持されます。

   それでは、2023年度「税制改正大綱」での注目ポイントを見ていきましょう。

1.中古マンション固定資産税減額の特例措置(2023年度創設)

   今回の税制改正大綱で創設された重点項目です。

   近年、築年数40年以上のマンションが増えてきていますが、その高経年のマンションで特に大規模修繕が実施されていないケースが増えており、このまま放置すると社会問題化しかねないとの指摘があります。

   大規模修繕が行われない理由は、住民の高齢化による修繕積立金の不足や意識の低下によるものとされていますが、国は解決に向けて「長寿命化に資する大規模修繕工事を行なったマンション」(この要件を満たすことがポイントです)に対し、工事翌年の建物部分の固定資産税を6分の1~2分の1に減額することにしました。減税割合は、市町村の条例で定められることになっています。

   対象となるマンションの要件は

(1)築後20年以上が経過した総戸数10戸以上のマンション
(2)長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していること
(3)長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること

の3点です。

   なお、この特例は2023年4月1日から2年間の適用期間となっていますから、条件に該当するマンションにお住まいの方は早めに申請して活用されることをお勧めします。

2.贈与税の暦年課税と相続時精算課税制度の見直し(65年ぶりの大改正)

   両親や祖父母から子や孫に資産継承するには、「贈与」あるいは「相続」という法的手続きを経る必要があります。ところが、贈与税も相続時精算課税も、非課税枠や控除制度の利用について、別途手続きが必要で、資産継承の障害との指摘が以前からありました。

   これについて今回見直しが行われ、2023年4月から、贈与税の「暦年課税」と「相続時精算課税」の制度が改正されます。

(1)相続税に加算する生前贈与の期間を7年に延長:これまで相続開始前3年間の贈与については生前贈与として相続税加算の対象でしたが、これを7年に延長することにより、いわゆる「駆け込み贈与」を抑制し、より計画的に早い段階での資産継承を促進することが真の目的とされています。
(2)相続時精算課税制度の簡略化:これまで相続時精算課税制度の適用を受けるには「相続時精算課税選択届出書」の届出が必要で、贈与を受ける毎に確定申告しなければなりませんでしたが、年間110万円までの贈与であれば確定申告が不要になります。簡易になったことで利用者が増えるものと考えられます。

   上記2点の改正は、2024年1月1日以降の贈与によって取得された資産にかかる贈与税、および、相続税に適用されます。ですので、相続すべき財産を保有されている方は、2023年中に「駆け込み贈与」の対応が必要です。詳細は専門家にご相談されることをお勧めします。

3.住宅購入目的の贈与税非課税枠の終了(見込み)

   両親や祖父母からの贈与についても原則としてもちろん贈与税が課されますが、教育資金(1,500万円まで)、結婚・子育て資金(1,000万円まで)、そして、住宅購入資金(2023年は省エネ住宅1,000万円/一般住宅500万円に縮小)については、おのおの非課税枠が設けられています。

   2023年度税制改正大綱では、教育資金および結婚・子育て資金については延長が明記されました。しかし、住宅購入資金に関しては何ら触れられておらず、したがって2023年末に協議される2024年度の税制改正大綱で再度(業界団体などからの)要望が通らない限り、自民党と公明党で組織される与党税調は、住宅購入目的での贈与税非課税枠を2023年度で終了させる公算が高いのでは、と関係者の間で話題になっています。

   なお、教育資金、結婚・子育て資金の贈与は、これまでは子や孫が対象の年齢を超えても特別税率での課税でしたが、改正後は一般税率で課税されます。

   この改正は2023年4月1日以後に贈与される資金から適用されます。

4.相続空き家売却益3,000万円特別控除の対象拡大

   相続または遺贈によって取得した空き家および敷地等の売却益(=譲渡所得)を控除することができる「相続空き家の3,000万円特別控除」は、2023年度税制改正によってその対象が拡大します。

   これまでは1981年5月31日以前に建築された住宅を、解体もしくは耐震リフォームして売却した際の売却益(区分所有物件ではないことと相続開始前に被相続人以外に居住者がいないことが条件)について最大3,000万円までの特別控除が適用されていました。

   改正後は、売却後に買主が解体もしくは耐震リフォームした場合も、控除の対象とされることになりました。ただし、買主による解体・耐震リフォームは売却した年の翌年の2月15日までに実施しなければならないことに留意してください(例年2月16日から確定申告期間に入るため)。

   このように、2023年4月以降は、住宅や不動産の相続に関連する税制がいろいろと大きく変わっていく節目になります。

   また、2023年度の税制改正大綱には、特にマンションの相続税評価について項目が設けられました。そして、市場での売買価格と相続税評価額が大きく乖離しているケースについて、「相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離との実態を踏まえ、適正化を検討する」旨明記されました。

   したがって、国交省で有識者会議などを開催し、年内をめどとして2024年度の税制改正大綱にいわゆるタワーマンション節税への対応策が盛り込まれる可能性が極めて高くなっています。

   不公平感を助長するような節税は今後許さないという国税当局の厳格な税制運営への姿勢が明らかですから、該当する方は租税回避行為との指摘を受けないよう、慎重に対応することが求められます。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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