ジップエア西田社長「まずは価格転嫁を考えずに...」 コスト管理の見極め、ブランド価値向上へ
とはいえ、わずか1%とはいっても、SAFの購入はジェット燃料に比べ割高で、クレジットの購入にも応分のコストがかかる。
LCCは文字通り「格安」の航空チケットが売り物のはずだが、なぜあえてコストプッシュ要因の事業に取り組むのか。航空運賃への価格転嫁に結び付くのではないか......そんな疑問も出るところだ。
これについて、ジップエアの西田真吾社長は記者会見で「まずは価格転嫁を考えずに、自社のコスト管理で対応したい」と語った。ジップエアは成田空港を拠点に、北米やアジアなどに国際線6路線を運航。23年度にサンフランシスコやマニラにも就航する計画だ。
西田社長は詳細なコスト管理については明かさなかったが、2025年度には全路線のCO2排出を実質ゼロにすることを目指すとしている。ほかにも、コスト削減の余裕があるということなのかもしれない。
脱炭素はどの業種にも共通の課題だ。
トヨタ自動車の場合、電気自動車の導入を高級ブランドの「レクサス」から進めるが、これは、脱炭素のために必要なコスト負担を富裕層のユーザーに求めやすいからだ。
JALグループは排出量取引を含まずに航空機のCO2排出の実質ゼロを2050年に実現する方針だ。トヨタとは逆に、まず格安航空のジップエアを先行させる。これにより、カーボンニュートラルにかかるコスト管理を見極めるとともに、グループ全体のブランド価値向上に役立てる戦略のようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)