JR西日本の株価が2023年2月に入って低迷しており、2月22日の東京株式市場で一時、前日終値比69円(1.3%)安の5115円をつけ、半年ぶりの安値となった。
新たな売り材料がこの日に出たわけではないが、コロナ後の業績回復力を懸念する見方が株価への下方圧力になっている。
22年4~12月期連結決算、最終損益は3年ぶり黒字 だが、通期の業績予想の変更なく、市場心理冷え込む
直近の業績開示である2022年4~12月期連結決算(1月31日発表)をみておこう。 売上高は前年同期比33.5%増の9748億円、営業損益は699億円の黒字(前年同期は794億円の黒字)、最終損益は873億円の黒字(前年同期は540億円の赤字)で、黒字はそれぞれ3年ぶり。
特に第3四半期である2022年10~12月期は、コロナ第7波収束後の需要回復に加え、政府の全国旅行支援や水際対策緩和の効果もあり、ホテルや土産物店を含めて好調だった。
JR西日本としても、赤字から黒字への原動力でもある主力の運輸業については、「12月末ごろにはコロナ前の9割程度に回復する」と想定していたが、「概ね計画通り」としている。
ただ、市場の心理を不安にさせているのは、第3四半期が流通業(JR西日本の事業分野分類でホテルを含む)なども好調なのに、通期の業績予想を変更しなかった点だ。
第4四半期(2023年1~3月期)は第8波の影響があるとみてJR西日本が慎重になっている面はあり、実際に2月までの運輸業の収益はコロナ前の8割台にとどまっている模様だ。
しかし、そうであるならば、全国旅行支援のようなカンフル剤がなければ9割を超えることはできないのではないか、との懸念が投資家に広がっていることが株価を下押ししている。
3月の大阪駅北側の新駅開業、24年の北陸新幹線の敦賀延伸、25年の大阪・関西万博などプラス要素に
もっとも、不安ばかりではなく期待もある。
5月8日にコロナが感染症法上の「5類」となることで、より人々の行動の頻度・範囲が拡大する可能性がある。また、まもなく公表予定の2024年3月期からの次期中期経営計画の内容について、「鉄道事業の収益性回復に加えて、非運輸業の拡大にも期待したい」(SMBC日興証券のリポート)との見方もある。
さらには3月に予定する大阪駅北側の新駅開業や2024年春の北陸新幹線の敦賀延伸に伴う鉄道ネットワークの充実、2025年の大阪・関西万博開催といったプラス要素もある。
こうしたプラス面の効果と実際の業績の推移が株価を左右することになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)