「1円スマホ」などとキャンペーンして、スマートフォンが極端な値引きで売られている実態に公正取引委員会のメスが入った。
「不当廉売」であり、背景には携帯電話大手4社が販売代理店に「厳しいノルマ」を課していると指摘、独占禁止法に抵触する疑いがあるとする調査結果を公表したのだ。
ネット上では、「携帯大手が端末販売と通信回線の両方を提供しているシステムに問題がある」という批判が上がる一方、「この物価高の折り、1円スマホ歓迎だ」とする意見もあり、話題になっている。
電気通信事業法の「抜け道」を悪用したカラクリ
スマートフォンをめぐっては、過去にも「1円」で販売するなど大幅な値引き競争が繰り返されたことから、2019年に電気通信事業法が改正され、通信契約とセットで販売する端末の値引きは、税抜きで2万円(税込み2万2000円)が上限とされた経緯がある。
しかし、その後も「1円スマホ」を含め、極端な安値で販売されるケースがあとを絶たなかった。背景に、端末のみなら制限なく値引きできる電気通信事業法の「抜け道」があるからだ。
たとえば、スマホ代金が10万円とすると、通信契約の有無にかかわらず、あらかじめ店側が7万7999円を値引きしておけば、スマホ代金は「2万2001円」となる。そして、通信契約とセットで契約する人に値引きの上限額である「2万2000円」を適用すれば、「2万2001円-2万2000円=1円」になる仕組みだ。
ただし、この方法だと、いちおう合法的だが、店側は大幅な赤字を覚悟しなくてはならない。それでも後を絶たないことから、「不当廉売」の疑いがあるとして、公正取引委員会はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯大手4社や、その系列の販売代理店、中古端末取扱事業者など307社を対象に書面で実態調査を行っていた。
2023年2月24日に発表された公正取引委員会の「携帯電話端末の廉価販売に関する緊急実態調査」によると、2022年1月から6月までの間に、「1円」も含めて1000円以下の極端な廉価販売が行われたスマホの台数は、全体の14.9%に上っていることが分かった。
OS別に見ると、Android端末が19.9%、iPhoneが11.9%で、4万円未満の機種での割合が30.4%と高かった。さらに、新規契約時では13.9%だったのに対して、MNP(番号持ち運び制度)によって他の携帯大手に転入したユーザーでは33.6%と、廉価販売の比率が高くなった。
つまり、「1円」など極端な低価格のスマホをエサに、他社のユーザーを吊り上げる構図である【図表1】。