飲食店のメニューやコンビニエンスストアの総菜から、卵料理が相次ぎ姿を消しつつある。鳥インフルエンザの流行などで卵の供給が滞ったり、価格が高騰したりしているためだ。卵料理はいつ戻ってくるのだろうか。
コメダ珈琲、すかいらーく、セブン、シャトレーゼ...たまごメニュー販売休止、使用量減
「玉子を使用した商品販売休止のお知らせ」
軽くランチを取ろうと立ち寄った東京都内の喫茶チェーン、コメダ珈琲の店頭でこんな表示が目に飛び込んできた。ミックスサンドや卵を使ったピザトーストなどは提供していないという。空腹時だったから、落胆はかなり大きい。
街中の店から卵料理が次々と消えている。
ファミリーレストランチェーン、すかいらーくホールディングスは2023年2月中旬から、卵を使ったメニューの販売の一部を休止した。傘下の中華レストラン「バーミヤン」の「天津チャーハン」、「ガスト」でトッピングとして提供されている目玉焼きなどが対象になっている。
セブン―イレブン・ジャパンは1月末から、卵を使った食品の一部を販売休止したり、卵の使用量を減らしたりしている。「セブンプレミアム半熟煮たまご」や「ツナと玉子のサラダ」などが対象だ。
菓子チェーンの「シャトレーゼ」もスイーツの一部の製造を休止するなど、販売を一時的に止める動きは後を絶たない。
背景には複数の要因 鳥インフルエンザの感染拡大の影響とくに大きく
こうした動きの背景には、複数の要因がある。
そもそも2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナからトウモロコシなどが十分に供給されなくなった影響から、鶏の餌の価格が高騰した。これに、円安の急伸が拍車をかけた。
さらに、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、外食を楽しむ人が増加していることで、卵の需要が高まって供給不足がいっそう激しくなり、価格高騰に拍車をかけている。
そして、極めつきが、2022年9月から広がる鳥インフルエンザの感染拡大だ。
鶏の殺処分が全国に広がり、卵の供給不足をさらに加速させているのだ。22年度の鶏の殺処分は23年2月中旬までで約1500万羽となり、全国で飼育されている鶏の約1割にものぼる。
卵の供給不足に伴い、価格は高騰。JA全農たまごによれば、2月中旬で、卵の卸値は東京地区のMサイズで1キロ350円を越え、過去最高を更新している。
流通関係者「供給不足は数か月続く」 厳しさ増す養鶏農家...餌代の負担大、電気代の高騰
この供給不足が解消される見通しはどうか。
野村哲郎農林水産相は22年12月、「正月明けになると少し落ち着いてくると思っている」と述べていたが、23年2月17日の会見で、「完全間違いというか先を見通す力がなかった。あと半年は待っていただかないと」と発言を修正した。
流通関係者の多くも「数か月は続くだろう」とみている。ひなから鶏を育て、卵を産むようになるには半年程度は必要だからだ。
そもそも原料高と円安で上昇した餌代の負担軽減が見込めそうもない中、電気代の高騰などもあって養鶏農家の経営はどんどん厳しくなっているという。現下の危機を機に、経営をやめてしまう農家も出てくるとの懸念も指摘されている。
流通関係者からは、「卵の値段はいつ戻るのかとよく聞かれるが、多くの食品は今、値上げラッシュが続いている。卵だけ当然のように下がると思われたら、生産者も売り手もたまらない」との困惑の声も上がっている。
卵は長い間、手ごろな価格で安定しており、「物価の優等生」と呼ばれてきた。そんな卵への見方を見直す時期に来ているのかもしれない。(ジャーナリスト 白井俊郎)