「働きがいを感じられない!」と、相次ぐ若手社員の離職...どう防ぐ?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE23(前編)】(前川孝雄)

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

「働きやすさ」ばかりを追求しても、「働きがい」は得られない

   「働きやすさ」と「働きがい」の関係を理解するためには、アメリカの心理学者F・ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」が参考になります。ハーズバーグの主張を整理すると、「働きやすさ」とは働く環境や労働条件、人間関係、給料などで、これらは「衛生要因」とされています。

   「衛生要因」を向上させることで、働き手の不満は減少します。しかし、仕事の満足度すなわち「働きがい」を増すことにはなりにくいとしているのです。

   そして、仕事の満足を増すためには、仕事そのものの内容、任される責任、上司や仲間からの承認、仕事の達成感などが大切で、これらを「動機づけ要因」としました。つまり、「働きやすさ」と「働きがい」は同じ延長線上にはなく、「動機づけ要因」を意識して追求していかなければ「働きがい」は得られないとしたのです(図参照。ハーズバーグの理論をもとに著者が作成)。

   つまり、CASEの働きがいが感じられない若手に、いくら賃上げや福利厚生を充実させても、引き留めの決定打にはなりにくいのです。任せる仕事の意味や意義、担ってもらう責任意識、目標達成を通じた成長実感こそが離職防止にもなるのです。

   また、衛生要因については人事や経営の采配で決まるものですが、動機付け要因については、マネジメントそのものともいえます。

   ただし、上司が「働きがいが大事だ」「働きがいを持て」と上から押し付けてはいけません。働きがいは外から与えられるものではなく、本人自身が内側から感じるものだからです。したがって「一緒に働きがいを大切にしていこう」「一緒に創っていこう」と呼びかけるのが、望ましい上司の姿勢です。

   一方で、働き手の側の心構えとしても、「働きやすさ」ばかりを指向する働き方では「働きがい」を得ることは難しいと自覚させることも大切です。

   自分はいかにすれば働きがいにつながる働き方ができるのか、働き手自身もしっかり考え、働き方とキャリアを展望していくことも必要です。より高い報酬を求めて転職を繰り返しても、一生磨き続けたいと思える仕事=ライフワークを得ることはできないでしょう。

   では、どのように働きがいをとらえ、若手社員に語り、共有していけばよいか。<「働きがいを感じられない!」と、相次ぐ若手社員の離職...どう防ぐ?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE23(後編)】(前川孝雄)>で解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。

姉妹サイト