東京の政財界にも発言力...松本氏、異例の関経連会長4期目入り確実 今回の件は「やりすぎ」の声も
1994年以降、関経連会長を輩出した企業は住友グループ(住友電気工業、住友金属工業)と関西電力しかない。
関西にルーツがある住友グループでも本社の東京移転が相次ぎ、住友金属工業のように他社と統合するケースもある中、自動車関連ケーブルなどを手掛ける住友電工は大阪に本社を置く数少ない住友グループの企業だ。
松本氏は住友電工の社長として業績を飛躍させた実績を携え、2011年に関経連副会長に就き、2017年からは会長を務める。当時の大阪は、大阪維新の会が主導する大阪府・市によって、2025年の国際博覧会の誘致活動が盛んになっていた頃。当初は懐疑的だった関西財界も後に積極派に転じ、2018年には誘致に成功した。
最大1850億円の会場建設費は、国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する仕組みだ。600億円を超える経済界の負担分を集める過程では、まずは松本氏が属する住友グループの出方が注目され、松本氏は住友グループの社長会「白水会」などを通じてグループ内に働きかけた。その結果、資金集めには一応のめどが立った。
旧財閥系ゆえに東京の政財界に対する発言力もあり、「(関経連会長は)万博までは松本さんで」というコンセンサスが関西財界に広がった。2023年5月に3期6年の任期が終了するが、年頭の記者会見で「万博を成功に導くための責任がある」と述べて、4期目入りを表明。同席した副会長は次々と松本氏を支持する意見を述べた。
関経連会長を住友グループと分け合ってきた関西電力は、歴代幹部が原発立地町の助役から長年にわたって金品を受領していた問題が2019年に発覚。各方面から強い批判を浴び、財界活動を事実上控えざるを得なくなっている。その後も他の大手電力を巻き込んだカルテルや送配電子会社の情報の「のぞき見」問題といった不祥事が相次いでおり、関経連副会長にも就けない状況だ。
こうして異例の関経連会長4期目入りを確実とした松本氏は、いまや関西財界で絶大な力を得るまでに至った。
ただ、関西財界セミナーでの振る舞いは「ちょっとやりすぎ」(財界スタッフ)との声もあり、今後も松本氏の足元が盤石とは限らない。言われっぱなしの関西同友会が関経連と距離を置くようになれば、万博の成功に向けてスクラムを組むべき関西財界に亀裂が生じる。万博まであと2年あまり。火種を抱えたまま準備が進む。(ジャーナリスト 白井俊郎)