社内サイトが大荒れ!?米アマゾン、突然の「週3日出社」要請 従業員はあの手この手で在宅勤務を「嘆願」(井津川倫子)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   米アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)が、従業員に「週3日以上の出社」を求めるメッセージを公表。複数のメディアが「社内が大荒れに荒れている」と混乱ぶりを報じています。

   米国でオフィス勤務再開へ向けた動きが目立つなか、グーグルやアップル社とは異なり「在宅勤務継続」の姿勢を打ち出してきた同社。突然の方針転換には、「聞いてないよ!」と憤る従業員の声が次々にリークされています。

   「在宅勤務」を前提に郊外に引っ越した従業員はどうなるのか...。アマゾンの社内サイトには「anger」(怒り)の声があふれているそうです。

  • 従業員は在宅勤務を続けたい(写真はイメージ)
    従業員は在宅勤務を続けたい(写真はイメージ)
  • 従業員は在宅勤務を続けたい(写真はイメージ)

「このまま在宅勤務を続けさせて!」嘆願の声、1万6000件

   新型コロナ禍が落ち着き、米企業では在宅勤務していた従業員をオフィスに連れ戻そうとする動きが広がっています。先日も、ディズニーが従業員に対して、週4日の出社義務を命じたとニュースになったばかり。

   その流れに「便乗」したのでしょうか。アマゾンCEOのジャシ―氏が、2023年5月から従業員に少なくとも週3日の出社を求めると突然発表して、波紋を広げています。

   同氏は、協働の効率化、チームの結束強化など、対面勤務の方が良い理由を複数挙げて理解を求めたようですが、米メディアは「従業員が怒り狂っている!」と、物騒な状況を伝えています。

Amazon employees express dismay, anger about sudden return-to-office policy
(アマゾンの従業員は、急なオフィス回帰政策に失望と怒りを表明している:米テックメディア)

A group of staffers spammed an internal website with comments expressing their anger
(社内サイトは、従業員たちの怒りに満ちたコメントであふれかえっている:米CNBC)

   報道によると、ジャシ―氏の「オフィスに戻ってこい」宣言は、まさに青天の霹靂だったようです。というのも、アマゾンは他社が「オフィス回帰」するなか、「在宅勤務継続」の姿勢を鮮明に打ち出していましたし、ジャシ―氏自身も半年前には「no plan to force workers to return to the office」(従業員にオフィス勤務を強要するつもりはない)と宣言していたほどです。

   突然の方針転換に、従業員はよほど面食らったのでしょう。メッセージが送られるやいなや、技術スタッフが社員向けスラックを立ち上げ、そこにはまたたく間に怒りや戸惑いの声、何よりも「このまま在宅勤務を続けさせてほしい」という「petition」(嘆願)であふれかえったそうです。

   米CNBCは、嘆願の件数は数日で1万6000件に達し、うち5000件は発表当日に寄せられたと詳細を伝えています。在宅勤務の継続を希望する理由として、子育てや介護との両立を上げる人が多く、なかには、郊外に家を購入した人が「通勤できる距離じゃない」と絶望する(?)事例も紹介されていました。

   「いかにもアマゾンっぽい」と感じられたのは、生産性の向上や優秀な人材の採用など、リモートワークのメリットを数値化して「プレゼン」したり、「Amazon has failed its role as earth's best employer」(地球上でもっともすぐれた経営者の立場を捨てるのか)と、経営陣のプライドをくすぐったりする手法です。

   嘆いたり怒ったりするだけでは課題は解決しない...。事態を一歩でも前進させようとする現実的な思考に、企業の強さを感じました。

やっとオフィス街に活気が戻ってくる! 地元市長は大喜び

   アマゾン社内が「オフィス出社回帰」宣言で揺れるなか、あからさまに喜びを表明しているのが地元シアトルの市長です。

   大手IT企業の城下町でもあるシアトルは、最もコロナ禍の影響を受けた都市のひとつ。IT企業が他業界に比べて在宅勤務を導入しやすかったこともあり、オフィス街から一気に人が消えて、地元産業に打撃を与えていました。

Seattle mayor praises Amazon's back-to-office policy
(シアトル市長が、アマゾンのオフィス回帰政策を称賛した)

   地元最大の企業であるアマゾンの従業員がオフィスに戻ることは、「オフィス街にとって朗報」とのこと。実際、シアトルの空き家率は16.7%に達していたほど「ガランとしていた」そうですから、レストランや地元商店が「大歓迎」していると報じられています。

   今のところ、アマゾン幹部が「妥協」する動きは報じられていませんが、誰もがハッピーになる選択肢はあるのでしょうか? 世界をリードするアマゾンならではの「画期的なソリューション」を期待したいところです。

   それでは、「今週のニュースな英語」「petition」(懇願、嘆願)を使った表現を紹介しましょう。

We will present a petition to the mayor
(市長に嘆願書を提出する予定だ)

I signed the petition, too
(私も嘆願書に署名した)

petition to save that building started
(その建物を守る運動が始まった)

   今回のアマゾンの動き、個人的には従業員側を応援したい気持ちです。もちろん、アマゾンの従業員が恵まれた環境であることに違いはありませんが、従業員の生活をかけた「嘆願」が世界に与える影響は大きいでしょう。経営陣と従業員の関係を変える動きにつながってほしいと考えています。(井津川倫子)

kaisha_20170303104637.png
井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
姉妹サイト