ロシアのウクライナ侵攻から1年が経つなか、ロシアでのビジネスから撤退する日本企業が、進出する上場企業全体の16%、27社にのぼることがわかった。
企業信用調査の帝国データバンクが「日本企業のロシア進出状況(2023年2月)」調査を、2023年2月20日に発表した。
背景には、戦争の長期化で事業継続のめどが立ちにくいことがある。
「脱ロシア」昨夏から急増 進出する上場企業の16%に
日本企業の「脱ロシア」の動きが、低調ながらも進んできた。
調査によると、ウクライナ侵攻直前の2022年2月時点で、ロシアへの進出がわかっている国内上場企業168社のうち、今年2月19日までにロシア事業の停止や制限、撤退を新たに発表・公開した企業は、全体の約半数にあたる79社だった。
このうち、ロシア事業から事実上の撤退、または撤退計画を明らかにした企業は27社にのぼり、全体の16%に達した。【図1参照】
撤退した企業は、昨年8月時点までは10社に満たなかったものの、今年2月までの半年間で新たに約20社の撤退が判明。急増していることがわかった。
自動車大手やその関連企業などを中心に、一時的な事業の停止措置から完全撤退、事業・現地子会社の売却といった恒久的な「脱ロシア」対応へと移行しつつある。
いずれも、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化にともない、部品の調達難や現地企業、市場の需要縮小などを理由とするケースが目立った。
一方で、この間に原材料調達のめどが立ったことで、現地生産を一部再開させた企業や、受注残などを理由に、現地事業を当面継続する企業も少数ながらみられた。
ロシア事業からの撤退 日本は先進国で2番目の低さ
また、帝国データバンクが米エール経営大学院の集計をもとに、世界各国の企業の「ロシア事業撤退(Withdrawal)」を分析したところ、全世界の主要企業約1600社のうち、約3割に当たる約500社がロシア事業から撤退、または撤退を表明していることがわかった。【図2参照】
このうち、日本企業の割合は先進主要7か国中2番目に低い水準で、ロシアでの事業展開が10社以上判明した全世界約30か国の中でも19番目の水準にとどまった。
国別にみると、ノルウェーやフィンランドは撤退の割合が60%を超えるほか、英国も55%が撤退した。【図3参照】
ただ、直接的な対ロ制裁の対象外である日用品や製薬などでは、欧米諸国のグローバル大手などでもロシアビジネスを続行するケースが多くみられ、「脱ロシア」を主導してきた欧米企業でも対応に差異がみられる。
たとえば、フランスの家庭用食品大手のダノンがロシア事業の9割に相当する乳製品や植物由来食品の事業から撤退する意向を明らかにした一方で、同じ家庭用品大手の米英企業ではロシアからの明確な撤退を示していないなど、ロシア事業への姿勢の違いが鮮明となっている。
こうした半面、日本企業では自動車大手などを筆頭に、昨秋以降、現地事業の撤退を決断するケースが増えている。
ロシア事業依存によるレピュテーションリスク以外に、部品調達などサプライチェーンの混乱といった物理的で短期の解決が難しい問題が理由だ。帝国データバンクは「日本企業の脱ロシアは『様子見=事業停止』の第一段階から『撤退』へ方針転換を決断する第二段階へ移行していく」とみている。