Zホールディングス、ヤフー、LINEが合併へ 複雑な組織構造を打開し、意思決定の一本化&迅速化は進むか?

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   Zホールディングス(HD)と、その傘下にあるヤフー、LINEの計3社が、2023年度中をめどに合併することになった。

   合併方式や詳細な日程などは今後詰めるというから、よくある親会社が子会社を吸収するという単純なことではないようだ。ZHDとLINEは21年3月に経営統合したものの、成果は乏しいとされる。今回の合併で経営の意思決定を迅速化し、成長加速を図るという。

   現状の何が問題で、それをどう変えようというのか。

  • Zホールディングス、ヤフー、LINEが合併へ(写真はイメージ)
    Zホールディングス、ヤフー、LINEが合併へ(写真はイメージ)
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ZHDの親会社にソフトバンクとネイバー 4層からなる複雑な組織構造

「過渡期的には機能したが、より統合を推進するため、意思決定の一本化と迅速化をする」

   ZHDの川辺健太郎社長共同最高経営責任者(CEO)が合併発表の会見(2023年2月2日)で述べた言葉に、今回の決定の狙いが込められている。

   それを読み解くために、この間の経緯を振り返っておこう。

   ZHDとLINEは2019年11月に統合を発表し、21年3月までに手続きを終えたが、組織は複雑だ。

   それぞれの親会社であるソフトバンクと韓国ネイバーが50%ずつを出資する統合会社を設け、その傘下にZHDを置いている。さらに、ZHDの完全子会社として、LINEやヤフー、アパレルEC(電子商取引)のZOZO、事務機器通信販売事業のアスクル、宿泊予約サイトの一休などがぶら下がる4層構造だ。22年10月には、ソフトバンクとZHDが共同で、スマートフォン決済のPayPay(ペイペイ)を連結子会社化している。

和製巨大IT企業として期待された経営統合 だが、サービスの統合なかなか進まず

   こうした統合は、月間利用者数約9300万人のLINEと、ECなどのサービスを提供する同約5500万人の「Yahoo! JAPAN」、さらに登録利用者数約5300万人のペイペイという圧倒的な顧客基盤を活かした総合力アップを目指したものだ。

   統合当時の報道でも、米巨大ITの「GAFA」(Google、Amazon、Facebook、Apple)や、中国IT大手に対抗する和製巨大IT企業誕生への期待の声が少なくなかった。

   同時に、スマホ決済でペイペイと「LINE Pay」、ニュースの「ヤフーニュース」と「LINEニュース」など、重複する分野も多く、サービスの再編をいかに進めるかが大きな課題とされた。

   実際、サービスの統合はほとんど進まず、辛うじてヤフーとLINE、ペイペイの3社で、新たな共通マイルのサービスを2023年3月から始めることになった(2022年11月発表)程度。サービスの融合に不可欠なヤフーとLINEのID連携については、今回の合併発表の際も「23年度以降」というままで、明確な時期は示されていない。

   今回の合併発表でも川辺氏が「意思決定がさまざまに交錯する中で、どうしてもスピード感を上げられない、あるいは考えを一つにまとめられない。そういったデメリットが、この2年を経てかなり出てきた」と認めた。まさに、この弱点克服が合併の直接の目的ということだ。

LINE出身の出沢剛氏が社長CEOに就任 魅力的なサービスを生み出せるか?

   背景には、持ち株会社が機能しなかったことがあった。

   1997年に独占禁止法改正で解禁された持ち株会社制度は、ソニーやパナソニックにもみられるように、子会社を各事業に専念させ、持ち株会社は司令塔として迅速に意思決定することにある。

   しかし、ZHDの場合、前述のような多層構造の中で、それぞれの事業会社に歴史があり、上場企業も多く存在する特殊な形態にならざるを得なかった。その結果、「複雑さがセクショナリズムを生み、持ち株会社のグリップが十分に利かず、意思決定を遅らせていた」(アナリスト)と評される。

   これを乗り越えるための合併=持ち株会社制度の解消なのかもしれない。その点で、注目すべきは、同時に発表されたトップ人事だ。

   ZHDはヤフー出身の川辺氏とLINE社長の出沢剛氏が代表取締役共同CEOとして指揮してきた。だが、4月からは川辺氏は代表権のある会長となり、出沢剛氏が社長CEOに昇格した。LINE出身者が主導する新体制といえる。

   四半世紀以上の歴史を持つヤフーに対し、LINEはサービス開始からまだ10年と若い。「LINEに息づく『ベンチャー精神』を活かしたスピード感ある経営により成長を目指すということだろう」(大手紙経済部デスク)。

   重複事業の統廃合は大前提で、その先にどんな魅力的なサービスを生み出せるか。楽天グループなどのライバルとの競争に打ち勝つカギは、そこにある。(ジャーナリスト 済田経夫)

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