トラブルやアクシデントすら、「パターン化」
あらゆる仕事の流れは以下のようなルーティンだと説明している。
調べる→大まかな方向性を決める→具体的なプランをまとめる→仕上げ作業をする→完成
トラブルやアクシデントすら、「パターン化」できるという。トラブルの回避方法やトラブルが起きたときのリカバリー方法もパターン化して段取り組み込んでおくことで、どんなトラブルも「想定内」になるのだ。
パターン化する際のポイントは、パターンの数を極力絞ることだ。日々の動きも「ルーティン化」するために、仕事の曜日を決めるなどの工夫をしているという。曜日ごとにやるべきことを決めて段取りすれば、ルーティンとなり、スムーズに仕事が進む。
水野さんはクライアントごとに打ち合わせをする曜日を固定することで、スケジュールがすっきりし、段取りもうまくいくという。
「選べる」ということは心理的なストレスになるため、ジーンズやTシャツは同じものをいくつも用意し、服を選ぶことにエネルギーを使わないようにしている。なるべく決断や選択にエネルギーを使わず、淡々と仕事を進める、そこから生まれた余裕で、仕事の質を高めるという発想は参考になりそうだ。
仕事を進めるときに必要なのが、わかりやすい言葉で書かれた「コンセプト」だ。相鉄のプロジェクトでは、「安全×安心×エレガント」というコンセプトを共有した。
コンセプト作りの前提となるのが情報収集だ。いつも小冊子が書けるくらいに調べる。さまざまな人に聞くのが欠かせないプロセスだ。
このほかにも参考になるポイントをいくつか挙げよう。
・「いいものをつくる」よりも「時間を守る」ほうが大切
・締め切りをつくる。ない場合は「仮」でもつくる
・仕事は「メンタル」でなく、すべて「時間」ではかる
・「段取り表」をつくる
・つねに頭の中を「空白」にしておく
・一度に複数の案件を考えない
・打ち合わせではその場でかならず1案。あとで思いついたら「2案目」
・チーム内の「上下関係」を排除する
・「所要時間」を添えて指示を出す
本書ではほかにも、「くまモン」誕生の秘話、東京みやげ「東京ショコラファクトリー」のイメージができるまでのプロセスなど、具体的なエピソードが満載で、説得力がある。
本書は2018年の初版発行だが、2023年1月に第8刷と版を重ね、支持されているのにも納得した。マーケティングやデザインの関係者に勧めたい1冊だ。(渡辺淳悦)
「いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書」
水野学著
ダイヤモンド社
1430円(税込)