「景気の過熱」よりも「労働市場の過熱」がはるかに上回る
ところで、なぜ今、「転職ドキ」なのだろうか。【図表8】はリクルートが2022年にまとめたリポート「労働市場の過熱と企業の対応」のなかにある「景気の底でも労働市場の過熱感は高水準を維持」というタイトルの説明図だ。
これを見ると、2013年頃までは日本銀行の「短観」(全国企業短期観測調査)が示す「業況感」(企業の先行きの景気見通し)と「人員不足感」、そして「転職時に賃金が1割以上増えた人の割合」がほぼ連動していた。
つまり、転職しても賃金が増えることを期待できるかどうかは、景気の動向に左右されるところが大きかった。好景気ならよいが、落ち込んでいる時に転職しても、賃金は上がりにくいというわけだ。
ところが、現在は、「景気の過熱」よりも「労働市場の過熱」のほうが上回っている状況だ【再び図表8】。
新型コロナによって落ち込んだ「業況感」のボトムより、はるかに上の水準に「人員不足感」と「賃金が1割以上増加した転職者の割合」のグラフがあることが見てとれる。それだけ人出不足が深刻になり、企業の「求人」が過熱しているというわけだ。
なるほど、転職するなら今が絶好のチャンスといえるだろう。(福田和郎)