「もうけの仕組み」が変わりつつある
「週刊東洋経済」(2023年2月25日号)の特集は、「徹底図解 もうけの仕組み100」。
デジタル化、原料価格高騰、脱炭素化......。ビジネス環境が激しく変化する中、変わるビジネスモデル。100業界をピックアップして、各業界の「もうけの仕組み」を「見える化」した。
体系的に理解するために9つのモデルを示している。井上達彦・早稲田大学教授の分析をもとに、売り上げを生み出す「もうけの源泉(横軸)」と、売り上げの流れをつくる「もうけの獲得方法(縦軸)」の2軸で整理した、ユニークなものなので紹介しよう。
1 製造販売モデル 製品やサービスを開発・製造し、提供 電子部品、自動車など
2 流通小売りモデル 商品を仕入れて、販売 百貨店、コンビニなど
3 合算モデル 目玉商品で、まとめ買いやついで買いを誘引する スーパーなど
4 継続モデル 製品やサービスを定期的に使い続ける 携帯電話事業者など
5 フリーミアムモデル 無料版を試してもらい、必要な場合は有料版に移行してもらう ゲームなど
6 設置ベースモデル ベースとなる製品の価格を抑え、消耗品やメンテナンスで稼ぐ 建設機械、プリンターなど
7 広告モデル 商品やサービスを無料にして、広告料を得る グーグル、メタなど
8 マッチングモデル 製品やサービスの提供者と利用者を仲介する 証券、クレジットカードなど
9 補完財プラットフォームモデル 外部から製品やサービスを提供してもらうことで自社製品の価値を高める 任天堂とソフトなど
9つのモデルを基に同じモデルの別業界との共通点を探したり、違うモデルの業界と比較したりすれば、業界・企業の強みがより浮き彫りになる、と説明している。
100業界の業績トレンド、10年後の天気予報、特徴をまとめている。
たとえば半導体。業績トレンドは上向きで、天気予報も晴れになっている。もうけの仕組みも進化し、「水平分業化」が進んだ、と指摘している。
それぞれの工程を専門とする企業が登場し、役割分担が進んだ。半導体の設計を専門とするメーカーは工場を持たないことから「ファブレス」と呼ばれる。設備投資を最小限に抑えながら、規模を拡大し、高い収益性を確保している。
そうしたファブレスメーカーの製品を製造するのが、ファウンドリーという受託製造会社だ。代表的なのが台湾のTSMC。日本勢はそうしたメーカーに供給する製造装置や材料の分野で強みを持っている。
半導体の製造には国をまたいで多くの企業がかかわっているが、コロナ禍で発生した半導体不足、ウクライナ危機で露呈した地政学リスクを考慮し、自国に製造拠点を構える動きが加速しているという。
AI、データセンター、EVなど、半導体を必要とする製品は今後も確実に成長するため、どのように製造の体制を整えていくのか、変化の時を迎えている。
ゲームは「買い切りから運営型が主流に」、総合商社は「トレードと事業投資の二刀流」、医薬品は「1つのヒットで巨額開発費を回収」、音楽は「サブスク時代で変わる稼ぎ方」、広告は「安定収益狙いコンサルへ進出」、メガバンクは「海外資金利益が国内に肉薄」など...稼ぎ方はさまざまな業界で変わりつつある。
自分が関係する業界だけでなく、他の業界の変化を知ることでヒントを得られるかもしれない。