JR東海は東海道・山陽新幹線で人気の検査用車両「ドクターイエロー」に体験乗車するイベントを2023年3月22日と23日に行う。走行中のドクターイエローに乗車するイベントは初めてという。
「出会えば幸運」プロの鉄道カメラマンでもチャンス少ない 今回は合計200人募集
ドクターイエローの正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」。見た目に目立つ黄色い車体から、この愛称で親しまれ「新幹線のお医者さん」とも呼ばれる。最高時速270キロで走行しながら、新幹線の線路や架線、電気信号などに異常がないか点検する。
JR東海によると、約10日に1度の周期で、東京~博多間(片道約1100キロ)を走行して各種データを計測。「ここで得られたデータは、日々実施している各設備のメンテナンスの基礎資料として活用されている」という。
実際にドクターイエローが走る区間や時間帯などは公表されていない。このため、鉄道ファンの間では滅多に会えないドクターイエローを見かけると「よいことがある」と縁起物扱いされている。プロの鉄道カメラマンでもドクターイエローを撮影するチャンスは極めて少なく、「出会えば幸運」という。
そんなドクターイエローの乗車体験イベントは3月22、23日の両日とも、東京駅10時集合で新大阪駅まで走行し、14時ごろ解散▽新大阪駅14時15分集合で東京駅まで走行し、それぞれ18時15分ごろ解散の上下計4本を予定している。募集は各50人ずつ、合計200人を募集する。
申し込みはJR東海の新幹線インターネット予約サービス「EXサービス」の会員が対象で、参加費は2万3620円。会員向けの専用サイト「EX 旅のコンテンツポータル」で2月24日14時から28日23時59分まで受け付ける。応募多数の場合は抽選となり、3月3日以降にメールで結果を連絡するという。
参加費は少々高額だが、鉄道ファンに人気のドクターイエローだけに応募が殺到するのは必至だ。
「観測ドーム」に着席できる&軌道検測室と電気検測室の見学、乗車記念グッズも
今回試乗できるドクターイエローは、1999年に営業運転を開始した新幹線「700系」をベースに造られた923形で、2000年に登場した。
イベントでは架線を確認するための「観測ドーム」と呼ばれる席に着けるなど、「実際の検測作業の雰囲気を体感できる」という。車内では、軌道検測室、電気検測室の見学もできる。
ただし、計測機器類が稼働している状態は見学できず、写真撮影も限られる。東京~新大阪間の途中駅での乗降もできない。グリーン車より高額の参加費を取るわりには制約が多い(?)気もするが、参加者には記念乗車証など乗車記念グッズが付くという。
ドクターイエローの源流となる総合試験車両は、1964年の東海道新幹線の開業とともに誕生した。
JR東海によると、開業当初はディーゼル機関車が牽引する軌道試験車が軌道設備を検測するなどしていた。その後、1974年に0系の新幹線車両をベースに、最高時速210キロで検測可能な試験車両が誕生した。
今回の体験イベントに登場するJR東海の923形のほか、JR西日本も2005年に同タイプのドクターイエローを導入しており、現在は両社の2編成が東海道・山陽新幹線で活躍している。
JR東海は「今後もドクターイエローに乗車できるイベントを企画していく」と話しているから、応募多数で今回の抽選にはずれたとしても、次回のチャンスがありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)