各種計測機器などを生産する電子部品大手、堀場製作所の株価が2023年2月15、16の両日の2日、合わせて1050円(17.2%)、終値ベースで上昇した。
14日の取引終了後に発表した2022年12月期連結決算の内容や、同期の増配が歓迎された。15日の取引終了後のアナリスト向け説明会の内容も好感され、株価の大幅な伸びにつながった。
成長エンジンは、半導体製造装置向けのガス制御装置「マスフローコントローラー」
まず、堀場製作所の概要を確認しておこう。京セラ、ローム、島津製作所など京都に本社を置く世界的な電子部品メーカーは数多く、堀場製作所もその一つ。
1945年に「堀場無線研究所」として創業し、1953年に堀場製作所に衣替えした。排ガスや大気汚染などの計測機器の研究開発、生産を創業間もないころから手がける。現在でも自動車の排ガス計測システムが主力製品の一つだ。なかでも、半導体製造装置向けのガス制御装置「マスフローコントローラー」が現在の成長エンジンとなっている。
事業セグメントは「自動車」「環境・プロセス」「医用」「半導体」「科学」の5分野。2022年12月期でみると、半導体事業が全体の売上高の42%を占め、営業利益の92%を稼ぎ出しており、全体をけん引している。欧米、中国などの海外展開もいち早く進めており、2022年12月期の連結売上高でみて海外比率は73%に及ぶ。
次に、2022年12月期連結決算を確認しておくと、売上高は前期比20.4%増の2701億円、営業利益は43.1%増の458億円、最終利益は59.9%増の340億円で、それぞれ過去最高を更新した。
半導体メーカーの設備投資が拡大したことによって、マスフローコントローラーなど半導体事業が好調で、調達価格高騰などで営業赤字となった自動車事業の不振を補った。円安も収益に寄与した。
23年12月期連結決算の業績予想...最終利益4.2%増見込む だが、円安による増益効果は未知数
市場が注目したのは配当だ。最高益達成を受け、2022年12月期の期末配当について11月時点の予想(1株145円)を180円に増額。中間期と合わせた配当は245円で、前期(150円)から95円増になる。
同時に発表した2023年12月期連結決算の業績予想は、売上高が前期比7.4%増の2900億円、営業利益は0.3%増の460億円、最終利益が4.2%増の355億円を見込む。
コスト高の自動車事業が上期15億円の営業赤字、下期で20億円の営業黒字と緩やかな回復軌道にのる。業績予想に関連して15日のアナリスト向け説明会で、半導体事業の主力製品「マスフローコントローラー」は受注残があるため、高水準の販売を維持するとの見通しが示され、15日に続く16日の株価上昇につながった。
もっとも、市場には「マスフローコントローラー」についての会社の見通しは「やや強気過ぎるではないか」(国内証券)との見方もくすぶる。日銀総裁の交代によって、円安による増益効果がはがれる可能性もある。このまま株価がさらなる上昇気流に乗るとまでは言い切れない面もある。(ジャーナリスト 済田経夫)