ウォール街が期待、第3のシナリオ「ノーランディング」話題に だが、エコノミストが指摘「高金利でも株高、景気回復、インフレと共存...都合良すぎでは」

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経済の単純な図式が当てはまらない「異常」な株高

「ノーランディング」に甘い期待を抱くウォール街
「ノーランディング」に甘い期待を抱くウォール街

   こうしたウォール街の見方をエコノミストはどう見ているのか。

   今後、米国株が調整を逃れるにはノーランディングが条件になると指摘するのは、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏だ。

   藤代氏はリポート「米国株上昇の条件はノーランディング」(2月20日付)のなかで、現在の米国株式市場の状況をこう説明する。

「2月入り後に発表された米経済指標は、雇用統計を皮切りに堅調なものが目立ち、金融市場ではノーランディング期待が浮上した。
従来、ソフトランディングとハードランディングの2択で動いてきた株式市場参加者にとってみれば、ノーランディングはFOMOそのものであろう(FOMO=Fear of missing out、買い遅れに対する恐怖)」

   現在、堅調なデータとともに、インフレが復活の気配を帯びてきた。同時に、FRB高官らのタカ派発言が相次ぐありさまだ。インフレ再燃予想から、利上げ長期化観測が高まり、10年金利は再び3.8%に乗せた。しかし、株価は持ち堪えており、S&P500は4000超を維持している。

ニューヨーク証券取引所
ニューヨーク証券取引所

   FRBの引締め警戒とノーランディング(景気再加速)への期待が交錯して、これまでの経済学の単純な図式、「長期金利上昇⇒株価下落」が当てはまらない状況になっているのだ。藤代氏は、こう指摘する。

「それでも実質金利とPER(株価収益率)の乖離(かいり)が、ここへきて一段と大きくなっていることには注意したい。むろん、PERと実質金利に絶対的な関係は成立しないのだが、予想EPS(1株当たり利益)が下向き基調にあるなか、株価が水準を切り上げたことで、結果的にPERは実質金利で説明の付かない水準へと上昇している」

   これはどういうことかというと、米国企業の業績が決して良い状況ではないにもかかわらず、株高が許容されている、ということだ。つまり、それだけノーランディングへの期待が高いのだ。藤代氏が続ける。

「今後、株価が調整を免れるにはノーランディング(景気再加速)、すなわち予想EPSの反転上昇が条件になるだろう。その点、企業収益を推し量る上で有用なISM製造業など企業サーベイに注目したい。現在のISM製造業景気指数は47.4と、リーマンショック以降3度しか経験していない領域に落ち込んでいる【図表1】。
利上げが終わり、景気の逆風が止むならば、消費・生産活動が本格的に復調し、ISM製造業が上昇局面入りする可能性は高まるが、インフレが終息しない以上それは難しいのではないか」
(図表1)ISM製造業・予想EPS(第一生命経済研究所の作成)
(図表1)ISM製造業・予想EPS(第一生命経済研究所の作成)

   市場が期待する「ノーランディング」があるかどうか、カギになる経済指標がISM製造業景気指数だ。ISM製造業景気指数とは、全米供給管理協会(ISM)が、300を超える製造業企業に対し、新規受注・生産・雇用・入荷状況・在庫といった項目に関するアンケートを実施、その回答結果から今後の景気動向を指数で予測するもの。現在、指数は47.4だが、50以上だと景気が上昇傾向と判断される【再び図表1】。

   注目のISM製造業景気指数が発表されるのは3月1日だ。

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