初任給や給与を増やす企業に、約7割の学生が「関心が高まり、就職先として志望度も上がる」と答えていたことが、マイナビ(東京都千代田区)の調査でわかった。
来春3月卒業予定の全国の大学3年生、大学院1年生(2108人)を対象に実施した「2024年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査 1月」を、2023年2月13日に発表した。
同社キャリアリサーチラボの研究員、長谷川洋介さんは、「物価高や将来の年金、貯金に関する不安を述べる学生の声があるなか、企業への評価の背景には、将来への経済的不安があると推察できます」と、コメントしている。
すでに86%がインターンシップに参加...前年より増加
調査によると、今年1月単月のインターンシップやワンデー仕事体験の参加割合は54.8%で、前月から8.8ポイント減少、前年同月からは1.1ポイントの減少となった。また、1月までの累計の参加率は86.1%となり、前年比で2.1ポイント増えた。
多くの大学で試験期間を迎えている1月だが、インターンシップへの参加率は今年も前年並みの水準で推移しているという。
また、インターンシップへの参加などの就職活動の準備と、学業・定期試験の両立で悩んだり、苦労したりしたことがある学生は、前年比2.7ポイント増の72.6%で、多くの学生が両立に苦労している様子がうかがえる。ただ、前年からはあまり変わらなかった。
「悩んだり苦労したりしたことがある」と答えた学生に、就活準備と学業の両立状況について聞くと「特にどちらを優先するということはなく、両方同じ程度力を入れている」と答えた人は13.0%で、前年から4.2ポイント増えた。
「就活準備を優先したいが、テストや学業に忙しい」と答えた人は32.9%(前年比2.2ポイント減)で最多。次いで、「テスト勉強や学業を優先したいので、そうしている」が23.1%(前年と変わらず)、「テスト勉強や学業を優先したいが、就活準備に忙しい」は22.6%(1.6ポイント減)、「就活準備を優先したいので、そうしている」は8.4%(0.4ポイント減)だった。
マイナビは、「就活準備と学業をうまく両立している学生も増えている」とみている。
企業の賃金の伸び悩みや賃上げに対する議論が活発になるなか、「初任給や給与を増額させる企業の動きを、どのように感じるか」聞いたところ、68.2%の学生が「その企業に対する関心が高まり、就職先としての志望度も上がる」と答えた。賃上げに対する学生の関心は高く、志望動機にも影響を与えることがわかった。【図1参照】
メタバースでの就活に「関心はある」けれど...
コロナ禍の影響でリアル(対面)での就活がなかなか厳しいなか、オンラインを活用した就活イベントが広がっている。
その新しい形式として、インターネット上の3次元仮想空間「メタバース」で開かれる就活準備のイベントや就活イベントについて、学生に「どのように感じているか」と聞いたところ、50.0%が「興味はあるが参加してみたいかはわからない」と答え、最多だった。
「興味があり参加してみたい」と答えた人は27.6%、「興味がなく参加したいとも思わない」は22.5%で、「参加してみたい」という学生が上回った。【図2参照】
「興味があり、参加してみたい」と答えた学生からは、
「アバターだったら気兼ねなく質問できそうだから」(文系女子)
「現地に行かなくていいし、対面だと緊張する。オンラインでも顔を出すのは緊張する」(文系女子)
「オンラインでありながらも対面のような臨場感を得られ、また質問など社員の方と交流しやすい」(文系男子)
「リアル(対面)とウェブの中間にあたるものと考えており、リアルにより近い感覚で」イベントに参加できるのと実際の自分はどこにいても参加することができるから、両方のいいとこ取りができると思う」(理系男子)
といった意見があがった。
また、「興味はあるが、参加してみたいかはわからない」と答えた学生からは、こんな声が――。
「フラットな評価がされそうなうえ、自己開示が少なくて済むという気軽さを感じるため興味はある。しかし、それで表情から伝わるものがなく、自分自身の気持ちが伝わるかが不安である」(文系男子)
「メタバースだから参加するというのではなく、興味を持ったものがメタバースだったら、うれしい、ぐらいの感覚」(理系女子)
一方、「興味がなく、参加したいと思わない」という学生の理由は、
「顔が見えないのが怖いから」(文系男子)
「わざわざメタバースでイベントを行う必要性が感じられないから。人が反応している様子が見たいのであれば、対面で行えばよいし、コロナ禍や遠方の人のことを考えるのであればZOOMなどの会議ツールを用いればよい。むしろ、企業のよって用いる方法が異なりすぎて混乱を招く恐れがあり、反対である」(理系男子)
「以前、合同説明会でメタバース形式のものがあったが、あまり良さを感じなかった」(理系女子)
などの声があり、賛否が分かれた。顔が見えないコミュニケーションの捉え方の違いがみられるようだ。
なお、調査は「マイナビ2024」の会員で、2024年3月卒業見込みの全国の大学3年生と大学院1年生を対象に、2023年1月20日~31日に実施。有効回答数は2108人。このうち、文系男子383人、文系女子879人、理系男子384人、理系女子462人。