「お金が足りない」「将来が不安だ」と考えている人に、お金の悩みから解放されてほしいと書かれたのが、本書「ハック大学式 超現実的で超具体的なお金の増やし方」(あさ出版)だ。会社員のまま経済的自由を手に入れるための、現実的で具体的な方法が書かれている。
「ハック大学式 超現実的で超具体的なお金の増やし方」(ハック大学 ぺそ著)あさ出版
著者のハック大学 ぺそさんは、YouTubeチャンネル「ハック大学」で情報発信しており、チャンネル登録者数は27万人を超える。外資系金融機関のマーケティング部門のマネージャーを務める。著書に「行動が結果を変えるハック大学式最強の仕事術」「『説明がうまい人』がやっていることを1冊にまとめてみた」などがある。
会社員のまま経済的自由を手に入れる、というのが本書のテーマになっている。
ここでいう「経済的自由」とは、決して数億円規模の資産家になるということではない。会社員として安定収入を得ている人が、それぞれの経済的なポテンシャルを最大限に生かして、精神的にも金銭的にも豊かになることを指している。
自分のバランスシートをつくるのがスタート
そのための第1歩が、自分のお金の現状を知ることだ。まず、自分のバランスシートを作ることから始める。
バランスシートの資産の部には、現金、普通預金、定期預金、株式、投資信託、持ち家、自動車などの資産を書き込む。負債の部には住宅ローン、カードローン、返済前の奨学金など、支払いが終わっていないものをすべて書き出す。
純資産は、「資産-負債」。それがいまのあなたのお金の実力、ということになる。バランスシートが完成した段階で、ポートフォリオがわかる。これに「未来のお金」を加えることで、真のお金の実力がわかるという。家計が赤字にならない限り、毎年いくらかのお金は残り続ける。それが、加える未来のお金、先々のキャッシュフローだ。
「自分の資産を正しく把握できると、今どれだけのお金を貯蓄すべきか、投資すべきか、どの程度のリスクを許容できるかを把握できるようになります」
老後資金として2000万円必要と言われるが、今2000万円持っていても、30年後にはそれでは足りるかわからない。お金の価値が変わるからだ。
したがって、資産すべてを現金で持ち続けるよりも、株式や債券、外貨、不動産などに振り分けて持っておいたほうが、リスクを回避できる可能性が高くなるという。リスクを取ることが逆にリスクヘッジになるのだ。
年収益率は6%前後を目指そう
次は、ゴール地点を設定する。現実的に達成可能な範囲でストレッチすればいいという。本書では、過去20年間の世界株式と世界債券の累積収益率のグラフを示し、「株式は米ドル建てで12.0%・円建てで13.3%」「債券は米ドル建てで5.0%・円建てで6.2%」となっている、と指摘。
この期間は投資にとって絶好の期間だったので、下落することも織り込み、株式市場に期待していい収益率(年率)は6%前後が現実的だとしている。
長期的には複利で運用するので、「月6万円を拠出できれば、30年後には4000~6000万円くらいの資産をつくるのは、それほど難しくない」と書いている。
バランスシートを作成し、先々のキャッシュフローを描いたら、目標を設定し、目標IRR(内部収益率)が3~6%になるよう、目標金額を調整する。エクセルを使うと簡単にできる。
いよいよポートフォリオを構築する。たとえば、目標IRRが3%の例を挙げている。
「外国株式(先進国株式)20%・先進国国債40%・日本株式5%・日本国債30%・グローバルREIT5%」
組み合わせは自由だが、2つのセオリーがあるという。
1つは国際分散投資を基本とすることだ。初めての人は投資対象が日本株式や日本国債に偏りがちだが、外国株式、先進国国債、新興国国債などをバランスよく組み合わせること。
もう1つは、目標IRRに沿った商品を選ぶことだ。目標IRRが高くなると、積極的にリスクを取る必要があるため、期待リターンの高い商品の構成割合が大きくなる。日本国債→先進国国債→先進国株式→新興国株式、債券から株式へ、先進国から新興国へとシフトしていくことになる。
本書では、年収高めの人、社会人4年目で余裕がない人など、6人のバランスシートをもとにアドバイスしている。若い人に参考になりそうなポイントをいくつか抜粋しよう。
・余裕がなくても確定拠出型年金(DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)だけ始めよう。なぜなら全額、課税対象所得から差し引かれるからだ。その分、年間の所得税を減らし、手取り金額を増やすことができる。
・節税効果が得られる投資対象は積極的に。例えば生命保険。規模は小さいながら節税効果を得られる投資商品の1つである。
分散投資が基本とは?
投資の基本的な考え方についても、説明している。
投資に絶対はない。だから分散する。仮に、1つの資産で期待通りのリターンを得られなくても、ほかの資産でカバーできるからだ。また、株式と債券は違った値動きをするため、併せ持つことで期待リターンは下がるが、その分リスクを抑えることで投資効率は上がるという。
次に、地域と通貨の分散。自分は日本人だという「ホームカントリーバイアス」は排除すること。銘柄も分散、また毎月、毎年、一定額を投資することで時間も分散する。
長期の資産形成に欠かせないのが、投資信託だ。自動的に分散投資することになる。
本書が勧めるのが、特定の指数(インデックス)と連動するように作られたインデックスファンドだ。ポートフォリオを構築し、その資産配分に納得できたら、それ以上は深掘りすることなく、ポートフォリオにしたがって投資信託を購入し、あとは放っておけばいい。
ポートフォリオの見直しは2~3年に1回で十分で、ふだんはお金のことは考えず、自分の仕事に集中すればいいという。
このほか、面倒な手続きが不要で節税できる「ふるさと納税」や会社員でも、個人で認められる経費がある「特定支出控除」、確定申告で節税できる「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」についても解説している。
さらに付録として、「会社員として稼ぐ力を上げる仕事術10選」として、スケジュール管理やメモ活用術、アイデア発想法などを紹介している。
会社員は毎月給料が入るという「ポテンシャル」があり、若ければ「時間」という武器がある、と説いている。少しずつ投資すればお金の心配から解放されると知れば、気が楽になるだろう。(渡辺淳悦)
「ハック大学式 超現実的で超具体的なお金の増やし方」
ハック大学 ぺそ著
あさ出版
1540円(税込)