圧倒的にメリットが大きい「会社都合退職」
辞める側にとって、失業給付を受ける際、どちらが有利かというと、圧倒的に「会社都合退職」のほうがメリットは大きい。まず、給付期間が違う。「会社都合退職」の場合は、原則90日から最大330日まで支給されるが、「自己都合退職」の場合は、原則90日から最大150日までと半分以下の期間だ。
また、「会社都合退職」の場合は、ハローワークに書類を申請後、7日の待機期間を経てすぐに支給されるが、「自己都合退職」の場合は、7日の待機期間を経た後、さらに2か月間も支給を待たされる(=給付制限)【図表1】。
このことが、現在、「転職しようとする動きの妨げになっている」と問題になっており、岸田首相がこの2か月間の給付制限を短縮するよう制度変更の検討を指示したのだ。
それにしても、なぜこんな理不尽に見える「格差」があるのかというと、「会社都合退職」の場合は、「会社の都合」で労働者が犠牲になるため、補償を手厚くするという考え方がある。これに対して、「自己都合退職」の場合は、「労働者の自己都合」で会社に迷惑をかけるとして、辞めにくくするという考え方が背景にあった。
もうひとつ、「格差」が設けられた理由として、就職と退職を頻繁に繰り返し、意図的に失業給付を受け続けることを防ぐ狙いもあるのだ。
しかし、終身雇用制度が崩れ、人材の流動化が進んだ。そのため、2020年10月の雇用法改正で、それまで原則3か月だった「自己都合退職」の給付制限期間を2か月に見直した【図表2】。岸田政権は、転職を促すため、さらに見直しを進めようとしているわけだ。