欧州中央銀行・前総裁ドラギ氏との共通点とは? 果たして「Uedaマジック」は出るか?
植田氏の評判で共通しているのは、コミュニケーション能力の高さ。国内外の専門家がこぞって、難しい問題を誰にでもわかるように説明できる人、と絶賛しているのです。
ある専門家は、「日本の経済について、海外の関係者が真っ先に教えを乞うのが植田氏だ」と、国際社会での信頼度の高さを伝えています。海外の超エリートたちと英語で対等に渡り合えると評される「コミュ力」に興味がわく一方、今回の起用で思い出すのが、欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏です。
ドラギ氏と植田氏は、著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏の教え子という共通点があります。くしくも、2010年代前半の欧州危機時に総裁を務めたドラギ氏と、「異次元の緩和策」の出口戦略を担うとされる植田氏の立場が重なります。
ドラギ氏といえば、2012年7月にロンドンで開催された講演会で発した、次のことばが有名です。
The ECB is ready to do whatever it takes to preserve the euro
(ECBは、ユーロを守るためなら何でもやる用意がある)
be ready to do whatever:何でもやる用意がある
かくゆう私も当時、BBCのポッドキャストでこの発言を聞いて、思わず背筋がぞくっとしたことを覚えています。当時、欧州債務危機は最悪の状態で、ギリシャのユーロ脱退やユーロ圏の崩壊危機が現実味を帯びていたほどでした。そんな火中に、総裁が「何でもやる」と堂々と宣言したことに、驚きと感動を覚えたものです。
このドラギ氏の「何でもやる宣言」が市場に安心感を与えたのでしょうか。その後ムードが一変して、今では「ドラギマジック」とも呼ばれています。
はてさて、「異次元の緩和策」を続けた黒田総裁の後釜として、火中の栗を拾うとされている植田氏は、同窓のドラギ氏のように「Uedaマジック」を発揮するのでしょうか。市場関係者だけでなく、日本国民一人ひとりがかたずを飲んで見守っていることでしょう。
それでは、今週のニュースな英語は、ドラギ氏の発言から「do whatever」(何でもやる)を取り上げます。
You can do whatever you want to do
(やりたいことをやればいいよ)
I will do whatever to make you happy
(あなたを幸せにできるなら何でもするよ)
I will do whatever you want
(君が望むことは何でもする)
私は経済の素人で、投資もしていません。それでも中央銀行の総裁として、市場や世間と円滑にコミュニケーションできる能力が重要だと思います。難しいことを誰にでもわかりやすく説明して、行動する力。「コミュ力」抜群の「Uedaマジック」に期待しています。(井津川倫子)