「食品ロス」軽減する光触媒の技術、みかん農家が歓喜!「傷んだみかん」ありません!【SDGs実践編】

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   かつて、寒い冬の昭和な日本の家庭では、こたつでテレビを観ながら、みかんを食べる光景が定番といってよかった。ただ、難点は時間の経過とともに、段ボールの箱ごと買ったみかんが傷んでしまうこと。

   食品ロスの削減が叫ばれている今、傷んだみかんを捨てるしかないとなると、みかん農家や「みかん好き」でなくても、「なんとかならないか...」と思うだろう。

   そんな、みかん農家のため、プリント基板やLED基盤などを開発・製造する浜松パルス(静岡県浜松市)が、光触媒技術を使った業務用空気清浄機「AIR REVIVE」で、みかんを長持ちさせることを可能にした。いったい、どんなものなのか?

  • みかんを長持ちさせるSDGsな技術とは?(写真はイメージ)
    みかんを長持ちさせるSDGsな技術とは?(写真はイメージ)
  • みかんを長持ちさせるSDGsな技術とは?(写真はイメージ)

収穫量、全国第3位の静岡県 「みかん」は1個も廃棄したくない

   みかんの収穫量は、2021年に全国で74万9000トン。このうち、第1位は和歌山県の14万7800トン、第2位は愛媛県の12万7800トン。静岡県はこれらに次ぐ、第3位の9万9700トンで、全国の13%を占めた(2021年、農林水産省調べ)。

   静岡県では「普通温州みかん」が多く、その収穫量に限れば、全国1位。

   和歌山県や愛媛県は、出荷のピークが12月頃の「早生みかん」が多いが、静岡県産の温州みかんのピークは1月以降で、熟成させて4月頃まで出荷するみかん農家もある。

   なかでも糖度が⾼く、濃厚な「⻘島温州」という品種が主⼒。春先まで食べられる、おいしいみかんを手にしたら、それは静岡県産かもしれない。

浜松パルスのみかん農家向け業務用空気清浄機「AIR REVIVE」(浜松パルスのホームページより)
浜松パルスのみかん農家向け業務用空気清浄機「AIR REVIVE」(浜松パルスのホームページより)

   そんな静岡県浜松市に本社を構える浜松パルスは、みかんの1個1個を長く、おいしく保存しようと、みかん農家向けに業務用空気清浄機「AIR REVIVE」を開発した。

   浜松市といえば、地域団体商標として登録されている「三ケ日みかん」で知られ、温暖な気候を生かして、みかんが盛んに栽培されている。

   ふだんはプリント基板などの開発・製造が主力の同社。ところが、「AIR REVIVE」は、農家が大事に育ててきたみかんを、できるだけ廃棄せずに、フードロスを出さずに出荷したいという、みかん農家の思いを後押しする、SDGs(持続可能な開発目標)な製品なのだ。

   近年の地球温暖化で、野菜や果物に大きな影響が出ている。

   気温の変化によって収穫時期が変わったり、長期貯蔵が難しくなり、貯蔵中の腐敗果が増えたりしている。浜松パルスは、そんな悩みを抱えている農家の声を聞き、「『フードロスを減らしたい』との強い思いから、農産物の鮮度保持装置『AIR REVIVE』を開発した」という。

   同社では「フードロスゼロ」を目指し、海外への出荷などを含め、すべての農作物に新しい可能性を追求している。

光触媒で特許技術をもつカルテックとの協業

   みかんを傷ませない、腐らせない技術は「光触媒」を活用する。

   光触媒とは1971年に日本で発表された技術だ。太陽や蛍光灯などの光が当たると、表面に強い酸化作用が発生してエチレンガスや食品臭、浮遊菌やカビ菌などを分解する仕組み。

   空気中に含まれた有害化合物やウイルス、細菌が、光触媒の材料である酸化チタン製などでできたフィルターを通る際に、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に分解されるため、人体に有害な物質を一切出さずに、安全に野菜や果物などを守ることができるという。

   浜松パルスは、こうした光触媒の技術を有する大阪市のカルテックから、技術提供を受けた。

   カルテックは、可視光型の光触媒に近接したLEDを照射する特許技術「可視光型光触媒ユニット」の効果で、他社が追いつけない圧倒的な触媒の反応スピードを実現。高性能で、かつ耐久性に優れた業界最高水準の光触媒の開発に成功した会社だ。

   その優れた光触媒技術の効果を発揮する独自の商品、家庭用の常温保鮮ボックス「フードフレッシュキーパー」を開発、販売する。この「フードフレッシュキーパー」は、食パン1斤を入れられる容量約10リットルのサイズ。

   そして、「中小企業 新ものづくり・新サービス」(2022年12月13~15日開催)の浜松パルスの出展ブースには、今回の限定モデルとして「みかんシール」付きのフードフレッシュキーパーを用意した。

みかん農家で実証実験、腐敗率に大きな改善効果

   では、腐敗を改善する効果はどの程度なのだろうか――。

   浜松パルスとカルテックは光触媒による食品保存の効果を検証するため、商品の販売を前(2021年12月~22年3月)に共同で、静岡市清水区のみかん農家の協力を得て実証実験を行なった。

   光触媒による除菌空間と通常の空間で、それぞれ4000キログラムの貯蔵みかんの保存状態を比較した。その結果、通常の空間で保管したみかんの腐敗率が11.8%だったのに対して、光触媒で除菌していた空間では0.75%と、腐敗率に大幅な改善がみられた。

   実証実験に協力したみかん農家は、

「長年貯蔵熟成みかんを生産してきましたが、光触媒の除菌空間で保存したみかんは、ほぼすべてがA判定(農協の基準)の結果に驚いています。光触媒で445キログラムの健全果の割合が増えたことで、約22万2500円の利益が向上できます」

と喜んだ。

   一方、カルテックは「光触媒による鮮度維持能力に高い評価を得られた」と胸を張る。浜松パルスも「この装置で採用している光触媒ユニットは『農家の未来を変える画期的な装置』といえる」と話す。

   これまでの冷風機のみの貯蔵庫から、「冷風機+AIR REVIVE」に換えることで、約5000トンのみかんの廃棄を防ぐことができるという。

   フードロスが減り、鮮度のよい、おいしいみかんが長く食べられるようになって、消費者にもうれしい。(J-CAST会社ウォッチ編集部)

清水一守(しみず・かずもり)
清水一守(しみず・かずもり)
一般社団法人SDGs大学 代表理事/公益財団法人日本ユネスコ協会連盟・ユネスコクラブ日本ライン 事務局長/英国CMIサスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格/相続診断士
日本大学文理学部を卒業。大学では体育を専攻。卒業後、家業である食品販売店を継ぐも新聞販売店に経営転換。地域のまちづくりとして中山道赤坂宿のブランド化を推進した。その後CSR(企業の社会的責任)の重要性を学び、2018年7月から名城大学で「東海SDGsプラットフォーム」として月2回の勉強会を開催中。SDGsを広めるための学びの場として2019年9月に一般社団法人SDGs大学を開校。現在、SDGs認定資格講座やSDGsイベントなどを開催中。
岐阜県出身、1960年生まれ。
一般社団法人SDGs大学
SDGsを広めるために、誰もが伝道師となるような認定資格講座を3段階で設定。SDGsを学ぶきっかけの資格としてSDGsカタリストから始まり、その上位資格としてのアドバイザー資格、さらにカタリストを育成するカタリストトレーナー資格を設け、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsを他人事ではなく、『ジブンゴト』としてとらえ、実践していけるようにSDGsの研究・周知・教育を行っています。校訓として学び・実践・達成・及人を掲げ、物心両面の幸せを追求し、真の『自分ごと』を探求できる学びの『場』として、誰もが参加ができるインラインによる「SDGs大学プラットフォーム」、「SDGsキャンプ」などのセミナー、イベントを提供しています。
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