光通信、社員の平均年収が1682万円!?...気になる業績や株価もチェック【よくわかる企業分析】

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   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、OA機器等の販売・リースを目的として1988年に設立され、携帯電話の販売で業績を伸ばし、1999年に東証一部(現プライム市場)に上場を果たした光通信です。

   日本を代表する営業会社として知られていますが、近年は他社商品を売るだけでなく、自社開発や企業買収により取り扱い商品のラインナップを広げています。2014年には保険商品を扱う子会社のNFCホールディングスを東証JASDAQに上場させ、2015年にはプレミアムウォーターホールディングス(東証スタンダード市場上場)を株式公開買い付けで子会社化しています。

ストック売上が72%でコロナ禍でも安定収益

   それではまず、光通信の近年の業績の推移〔IFRS〕を見てみましょう。

   光通信の売上収益はコロナ禍の影響をもろともせず、2022年3月期には5782億円もの売上収益をあげており、4期連続増収となっています。

   自社商材の売上収益は、2022年3月期で全売上収益の75%を占めています。直近5期間の年平均成長率は、全売上収益が7%に対し、自社商材では同18%と非常に大きな成長を続けています。

   また、2022年3月期の全売上収益に占めるストック売上の割合は72%で、安定的な収益が得られるしくみを構築しています。

   営業利益は、2021年3月期に電力取引価格高騰の影響を受けて一時落ち込みましたが、2022年3月期には過去最高益を達成。営業利益率も14.4%とコロナ前の水準を上回っています。

   2023年3月期の業績予想は、売上収益が6000億円と過去最高を更新する一方で、営業利益は前期比7.3%減の770億円とやや落ち込む見込みでした。この理由について、決算短信には「一過性収益の減少等により」と記載されており、それを除くと増益になるとのことです。

   しかし、第2四半期決算時には業績予想の上方修正を行い、売上高(2023年3月期より呼称変更)6200億円(前期比8.2%増)、営業利益850億円(同1.7%増)となる見込みです。

「自社開発の商材」で売上収益の4分の3を生み出す

   光通信は、以下の3つのドメインで事業を展開しています。売上高構成比は「法人サービス事業」が約半数の48.0%、残りの半分を「個人サービス事業」(26.6%)と「取次販売事業」(25.4%)で折半しています。このうち、他社商材を扱うのは取次販売事業のみ、残り2つの事業は自社商材を扱っています。

   「法人サービス事業」は、主に中小企業に対して、自社で企画・開発した商材の販売を行っています。商材は、通信回線サービスや電力、各種システムなどです。2022年3月期の売上収益は2786億円、営業利益は357億円、営業利益率は12.8%です。

   「個人サービス事業」は、主に個人に対して、自社で企画・開発した商材の販売を行っています。商材は、通信回線サービスや宅配水などです。2022年3月期の販売実績は1540億円、営業利益は286億円、営業利益率は18.6%です。

   「取次販売事業」は、主に中小企業や個人に対し、通信キャリアや保険会社、メーカーなどの各種商品の取次販売を行っています。2022年3月期の販売実績は1475億円、営業利益は212億円、営業利益率は14.4%です。

   なお、個人向け事業の宅配水は、2015年に株式公開買い付けで子会社化したプレミアムウォーターホールディングスを通じて販売を行っています。

   取次販売事業の通信キャリアについては、ジェイ・コミュニケーションとの代理店契約を通じてKDDI、テレコムサービスおよびメンバーズモバイルとの代理店契約を通じてソフトバンクのスマホを販売しています。

   保険については、NFCホールディングスとの販売業務受託契約を通じてメットライフ生命保険の募集代理を行っていましたが、2023年3月期の上期末にオフバランス(会計上のリスクが存在する取引を貸借対照表の外に出す措置)としています。

平均年間給与「前期比2.3倍増」のナゾ

   光通信の連結従業員数は、2015年3月末には1万人を超えていましたが、自社グループの直営店を代理店に譲渡することで、2018年3月期には7225人にまで減らしています。その後もさらに人員を絞り込み、2022年3月末には5310人までスリム化しました。

   光通信の単体従業員数も、2015年3月末には1000人を超えていましたが、2018年3月期に管理部門を関係会社に移管することにより407人にまで減らし、その後も事業部門の社員をグループ会社に転籍させて303人→143人→85人とスリム化。2022年3月期には、ついに7人になりました。

   このように、持株会社の社員を絞り込むたびに光通信単体の平均年間給与は上昇を続け、2021年3月期は前期比減となったものの、翌2022年3月期には1682万円と、前期比で約2.3倍に急増しています。

   この7人の平均年齢は43.7歳で、平均勤続年数は5.0年。光通信グループ全体の戦略立案および管理業務に携わるために、1000万円以上の報酬で中途入社した幹部社員ではないでしょうか。

   光通信の採用サイトを見ると、新卒採用の情報はありますが、キャリア採用の募集は掲載されていませんでした。ただし、転職サイトには、エンジニアから法人営業、自社商品の企画、経理や内部監査など幅広い職種の求人が掲載されています。

   法人営業の求人の想定年収は、営業23歳女性(入社1年目)で390万円(月給25万円+インセンティブ)、課長29歳女性(入社2年目)で734万円(月給35万円+インセンティブ)ということです。営業に自信のある方は検討してみてはどうでしょうか。

「20営業日連続ストップ安」も今は昔

   光通信といえば、2000年前後の「ITバブル投機銘柄」と記憶している人もいるかもしれません。1999年9月に東証一部上場、株価はまたたくまに上昇しましたが、2000年に携帯電話の架空契約が発覚し、24万円あった株価が3ヶ月あまりで7000円台に急落。「20営業日連続ストップ安」「年間値下がり率99.1%」はワースト記録になっています。

   その後、複写機販売に業態転換して経営を立て直し、2020年1月には株価を2万8150円まで戻し、現在は1万8000円前後を推移しています。

   光通信の強みは「販売力」ですが、その裏には強力な「顧客基盤」「販売網」があります。光通信の販売網は主に販売代理店によるものですが、その数なんと約1000社。その先には法人契約数約100万件、個人契約数約300万件の顧客基盤を擁します。

   このような顧客および販売チャネルに合った商材を開発することに成功すれば、業績は自然と伸びていくしくみです。近年は、自社開発やM&Aによって調達した自社商材を販売し、高い利益率を誇っています。(こたつ経営研究所)

こたつ経営研究会
こたつ経営研究会
有価証券報告書や決算説明書などの公開情報を分析し、会社の内情に思いをめぐらすニューノーマルな引きこもり。昼間は在宅勤務のサラリーマンをしながらデイトレード、夜はネットゲームをしたりこたつ記事を書いたりしている。好きなピアニストはグレン・グールド。嫌いな言葉は「スクープは足で稼げ」。
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