最長2115年まで...「有料高速道路」50年延長、改正案を閣議決定 終わらない債務返済、無料化は夢のまた夢

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   政府は2023年2月10日、高速道路の有料期間を現在の2065年から最大50年間延長するため、道路整備特別措置法など関連法改正案を閣議決定した。成立すれば、有料期間は最大2115年まで延びる。

   本来、公共財である道路は「無料」が原則。高速道路も建設費の債務を返済し終えたら無料にするのがルールだが、大手紙も「無料化の棚上げ」(日本経済新聞)、「『無料化』は事実上の撤回」(読売新聞)などと報じており、無料にするという約束は「反故」にされたといえそうだ。

  • 高速道路の無料化、事実上の撤回に…(写真はイメージ)
    高速道路の無料化、事実上の撤回に…(写真はイメージ)
  • 高速道路の無料化、事実上の撤回に…(写真はイメージ)

民営化以降の返済は順調だが、老朽化に伴う改修費は膨らむ一方

   高速道路を建設・運営する道路4公団(日本道路公団、本州四国連絡橋公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団)は2005年、東日本高速道路(ネクスコ東日本)、中日本高速道路(ネクスコ中日本)、西日本高速道路(ネクスコ西日本)、首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路の6社に再編・民営化された。

   正確に言うと、道路資産の保有・債務返済という下部構造と、道路建設・管理・料金徴収という上部構造という「上下分離方式」で、下部構造を担う独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構も設立し、再編6社は同機構から道路を借りて、「貸付料」を支払う仕組みだ。

   民営化は、「官から民へ」という小泉純一郎政権の構造改革の一環で断行された。コスト意識が希薄で、建設費や管理費が増え続ける「赤字垂れ流し」を止めるというのが大義名分だった。

   民営化時点で、高速道路建設に伴う債務は約40兆円あった。そのため、本四公団の借金の一部を国が肩代わりするなどしたうえで、2050年までに建設費を回収し、高速道路を無料にすると決めた。さらに、2012年に起きた中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故を受け、老朽化対策費を賄うため、有料の期限は2065年と、15年先送りされていた。

   2022年3月末時点の債務は28兆2700億円残っているが、民営化以降の返済は、まず順調といえるだろう。この間、新東名、新名神の建設も進めながらの数字だ。

   ただ、2014年以降も、老朽化に伴う改修費は膨らむ一方だ。

   ネクスコ東、中、西日本の3社は23年1月末、改修のために新たに1兆円が必要との試算をまとめた。内訳は東3000億円、中4000億円、西3000億円。すでに発表している首都高速、阪神高速を合わせると、5社計で1兆5000億円に達する。

   これまで本四高速を含めた6社の改修計画は5.4兆円だったから、6.9兆円に膨らむことになる。従来計画ではこの増加分を賄えないと判断し、今回の法案になった。

膨らむ改修費用...必要箇所の増加、EV充電施設の拡充、人口減少も足かせに

   が、状況がさらに悪化する材料が多く、一件落着といきそうもない。

   まず、改修費用の増加だ。

   ドローンや超音波などによる点検技術もあって、各社は「新たな劣化が判明することも想定される」とみている。技術の向上自体はいいことだが、これにより、改修必要箇所が増えるのは確実だ。

   今回の法案は、一定期間ごとに改修事業と新たに発生する借金の返済計画を作成するとしており、返済期限が逃げ水のように延ばされることになりかねない。

   人口減少や若者の車離れ、電気自動車(EV)の拡大など、モータリゼーション全体を取り巻く状況変化の影響もよく見ておく必要がある。

   法案には、サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)における利用者利便に資する施設と一体的に整備される駐車場の整備費用の一部について、高速道路会社に財政支援する新制度も盛り込んだが、EVの充電施設が念頭になる。

   限定的な補助で、充電設備が一気に設置されるわけではないだろうが、現状では逆に過疎地域を中心に高速道路の給油所の減少が問題になっている。

   たとえば、北海道の千歳市・足寄市・釧路市を結ぶ道東道は、全長250キロ以上の中で給油所は由仁PAだけで、足寄インター~由仁PAの175キロにはない。こうした150キロ以上給油所がない区間が全国に10か所以上あるというが、そうした問題は素通りだ。

   国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口は2065年には8800万人、2115年に約5000万人を割る可能性がある。交通量が落ち、高速の料金収入も減るだろう。

   斉藤鉄夫国土交通省は法案を決定した閣議後の記者会見で「債務完済後には料金を徴収しない仕組みとなっている」と釈明したが、実態として、無料化はエンドレスに先延ばしになる可能性が高い。(ジャーナリスト 白井俊郎)

姉妹サイト