「植田日銀」の金融緩和見直し、前倒しになるリスクも
こうした混迷を深めるFRBの金融政策が、4月に日本銀行総裁に就任予定の植田和男氏の政策にも大きな影響を与えると指摘するのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「米国CPIショック再び:植田日銀の金融緩和見直しにも影響か」(2月15日付)のなかで、こう述べている。
「植田新総裁は、金融緩和状態は維持しながらも、異例の金融緩和について、その副作用の軽減を狙って見直しを進めることが予想される。イールドカーブ・コントロール(YCC)の大幅見直しと、2%の物価目標の中長期目標化などの見直しは、4月の就任から比較的時間を置かずに実施することが予想されるところだ。
しかし、それに続くマイナス金利政策の解除、YCC撤廃、国債保有残高の削減などをどのタイミングで実施するかは、内外経済や為替など金融市場環境などに左右されるだろう」
とりわけ重要なのが、FRBの金融政策だという。
FRBの利下げ観測が金融市場に広がる中で、日本銀行がマイナス金利解除などの本格的な政策見直しを行なえば、急激な円高を招く恐れがある。では、日本銀行はいつ政策変更に踏み切るか。
木内氏はこう推測する。
「筆者(木内登英氏)は、今後米国経済の減速傾向がさらに明確になり、少なくともFRBの利下げ観測が今年後半に金融市場で強まることを前提に、マイナス金利解除などの本格的な政策見直しは来年後半以降にずれ込む、との見通しをメインシナリオとしている。
ただし、米国経済の予想外の堅調、物価上昇率の予想外の上振れが生じれば、FRBの利上げがより長期化する可能性がある。それは、いずれは米国経済のさらなる下振れにつながるものと考えられる。
しかし、FRBの利下げ観測の浮上が後ずれすれば、日本銀行の本格的な政策見直しの時期が前倒しされるリスクが高まる可能性がある点には留意しておきたい」
いずれにしろ、米国経済の行方とFRBの動向をにらみながら、荒海に乗り出す「植田日銀丸」は難しい舵取りを迫られるわけだ。(福田和郎)