深刻な人出不足で、賃金インフレが収まらない
これまで市場では、3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げは終了するとの期待が大半だったが、「5月のFOMCまで続く」と、自らの見方も修正したのが第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏だ。
藤代氏はリポート「インフレの粘り勝ち 利上げは5月まで続く」(2月15日付)のなかで、「1月米CPIはエコノミスト予想を上回り、インフレの粘り強さを印象付ける結果になった」として、CPIと同時に発表された、1月のNFIB中小企業調査に注目した。
「NFIB」とは米中小企業の業界団体「全米独立事業者協会」のこと。NFIBが調査した労働者不足を指摘する企業の割合のグラフ【図表1】を示しながら、人出不足によって賃金インフレが収まらない現状をこう指摘した。
「(コアCPIが)2%以下の領域に向けて一段と低下するには賃金インフレの終息が必須条件となる。ただし、(新型コロナを恐れて早期にリタイアした)55歳以上の労働参加率低下など、労働市場の歪みが構造的な色彩を帯びつつある現状に鑑みると早期の終息は期待にしにくい。
そうした懸念を裏付けるかのように、同日発表された1月のNFIB中小企業調査では『労働者不足を指摘する企業の割合』【図表1】と『販売価格引上げを計画する企業の割合』が再び増加した」
そして、藤代氏はこう予想する。
「筆者(藤代宏一氏)はこれまで3月FOMCにおける0.25%利上げが今次局面の最後になるとみていたが、1月の雇用統計と消費者物価指数を踏まえ、最終利上げを5月FOMCに変更し、FF金利(誘導目標レンジ上限)の最終到達点(ターミナルレート)は5.25%とする。年内の利下げ予想は現時点で据え置くが、予想変更の方向感は『2024年前半』に傾いている」