「赤・青・黄」3つの色をイメージすると、売れるコピーができる!

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   「たった1時間で売れる言葉がつくれるようになる」というサブタイトルに引かれて読んだのが、本書「ほしいを引き出す言葉の信号機の法則」(ぱる出版)である。買いたくなる言葉をつくる秘訣は、3つの色をイメージすることだ、と説いている。

「ほしいを引き出す言葉の信号機の法則」(堤藤成)ぱる出版

   著者の堤藤成さんは、電通出身のコピーライター、クリエイティブ・ディレクター。現在はオランダと日本を行き来しながらスタートアップ企業で活動。日本新聞協会新聞広告クリエーティブコンテスト・グランプリ&コピー賞などを受賞している。

   本書の最大の特徴は、コピーライティングの手法を「信号機」にたとえ、わかりやすく解説していることだ。人を動かす言葉には、「とどめる赤」「すすめる青」「きになる黄」の3種類あるという。順に説明しよう。

「不」の解消のためなら、人々は喜んで「買いたい」

   「とどめる赤」の言葉は、「不」に注目することが重要だ。たとえば、不安、不満、不足、不都合などが思いつく。多くのビジネスは「不」を解決することから生まれた。「不安」を感じるからこそ、保険や不動産投資などの産業は生まれたわけだ。また、移動に時間がかかる「不便」から、車や電車、飛行機などの産業は発達した。

   こうした「不」の解消のためなら、人々は喜んで「買いたい」と思うのだ。相手が関心を持つ「不」に関する言葉を投げかけると生理的に人は動く、と説明する。

   どのような「不」が、自分が扱う商品に関してあるのかをフィールドワークで観察することを勧めている。良質なインプットがないと、良質なアウトプットとなる「人を動かす言葉」「売れる言葉」は出てこないからだ。

   リアルなフィールドワークとしては、実際の売り場や店舗に行き、どんな商品が売られているのか、どう見えるのかなど、発見したことをすべて書き留める。調査会社とともにユーザー調査してもいい。

   また、オンラインでのフィールドワークも大切だ。ユーザーの「不」に関する口コミをさまざまなメディアやSNSから集める。具体的には「商品名+評判」や「商品名+口コミ」というキーワードで、Google検索や画像検索をする。

   これらを分析したうえで、自社のウェブサイトや商品サイトを点検すると、自社サイトに書かれた言葉の違和感や、もっとこんな言葉が刺さるのではないかというアイデアが湧くという。

   こうして徹底的に顧客の声をインプットしたら、「不」の切り口ごとに、どんどん頭の中に浮かんだことを書き出す。その中からいいものが生まれるはずだ。ただし、「とどめる赤」は劇薬でもあるから、効き目が強すぎるので、乱用は厳禁だ。

驚くほど多くの人が自社の商品を信じていない

   次に、「すすめる青」の言葉とは、相手を望む未来にすすめる言葉である、と定義している。

   決して世界一の商品にしか価値がないわけではない。あなたの商品やサービスを買ってくれた人の声の中に「すすめる青」のヒントがあるという。

   「すすめる青」の問いは、「私には、どんな存在意義があるのだろうか?」というものだ。堤さんはこれまで多くのクライアントを担当し、驚くほど多くの人が自社の商品を信じていないことに驚いたそうだ。

   そこで、「リフレーミング」という手法で、自社の商品や企業の捉え方を変えてみよう、と提案している。

   その際、その商品が最も価値を発揮するポジティブな状況を探す「状況のリフレーミング」と、自分で意味づけを変える「意味のリフレーミング」がある。後者の例としては、「八方美人」は「誰にでも気を遣える人」というポジティブな意味になる。

   「すすめる青」を、漢方薬に例えている。ポジティブで存在意義が伝わる言葉は、安心感と信頼をつくり出す。長期的に使い続けることで、資産になるのだ。

「売る」から「うるおす」へ発想の転換

   3つ目の「きになる黄」は、現状に困っている人に、一歩踏み出してもらう最後の一押しをすることだ。行動、時間、対象を限定すると、強い言葉が生まれる。何を限定することが自社の商品にとって一番効くかを考えるといい。

   これについて、著者がこれまでに関わった豊富な事例をもとに解説している。

   たとえば、「絆の大切さ」を伝えるという課題に対して、堤さんは、「絆が感じられない」という「不」の状態とはどのような時かと考えた。

   「不安」=「ひとりぼっちな気がして、さみしい時」。ちょうど生まれたばかりの子どもの出産を思い浮かべ、絆を実感できるあるモノに気が付き、最終的に以下の言葉が生まれたという。

「さみしくなったら、おヘソを見よう。
 あなたがひとりじゃなかったこと。思い出したら、きっと大丈夫。
 実感しよう、絆」

   このコピーは、日本新聞協会新聞広告クリエーティブコンテスト(2009年度)で最優秀賞を受賞した。

   本書がユニークなのは、売れない時代に必要なマインドとして、「うるおす」ということを強調していることだ。どうやって人に「売る」か、ではなく、どうやって人を「うるおす」か、に考え方を変えることが大前提になる、と強調している。

   それを痛感したのは、コロナ禍で「消費」よりも「安全」が大事とされ、広告の仕事が悪者のように捉えられたからだという。

   目の前の困っている人に対して自分が好きなこと、得意なことで、隙間を埋めてあげること。そこから感謝の好循環が生まれ、経済が回っていく、という。無理やり「売る」のではなく、社会を「うるおす」視座を持とうという提言に共感を覚えた。(渡辺淳悦)

「ほしいを引き出す言葉の信号機の法則」
堤藤成著
ぱる出版
1540円(税込)

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