海外経済の悪化、急激な円高...個人消費回復は幻想
民間予測を大きく下回ったGDP速報値は、「2023年の成長率が他国より高くなると見込まれていた、日本経済見通しの楽観論に疑問を投げかけるものだ」と指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「10~12月期の成長率は下振れ。先行きは輸出環境に懸念:金融緩和の見直しで円高進行リスク」のなかで、たとえば「日本経済見通しの楽観論」の根拠の1つだった「個人消費の回復」を過大評価すべきではないと批判する。
「新型コロナ問題を受けた個人消費の落ち込みからの回復は、すでに相当程度進んでおり、回復余地はそれほど大きくないのではないか。実際、昨年の11月、12月については、実質個人消費指数は2か月連続で低下している」
「今回のGDP統計を見ても、実質個人消費の前期比上昇率は、2021年10~12月期の前期比プラス3.0%をピークに、そのトレンドは次第に低下してきているように見える。この点を踏まえても、新型コロナ問題の反動で個人消費が強く回復すると予想するのは楽観的過ぎるのではないか」
「一方で、足元の日本の経済指標には気になるものも出てきている。2022年10~12月期の鉱工業生産は前期比マイナス3.1%と大幅に減少した。
景気ウォッチャー調査の景気の現状判断は、1月分まで3か月連続で低下している。先行き判断は幾分持ち直しているものの、依然として判断の分かれ目である50を下回った状態にある」
そして、日本を含む主要国・地域の景況感指数(PMI=50を下回ると景気減速を示す)のグラフ【図表2】を載せながらこう懸念を示す。
「景気の方向性を示す傾向が強い製造業の景況感は、主要地域ではいずれも判断の分かれ目である50を最新の1月調査まで下回り続けている【図表2】。
欧米地域では今までの大幅利上げの影響に加えて、なお続けられる利上げの影響が、経済には逆風になると考えられる。その結果、欧米経済は今年半ばから年後半にかけて景気後退に陥ることが見込まれる。
そうした場合、日本経済だけ堅調を維持するとの見方は楽観的過ぎるだろう。日本は外需依存度が高い経済である。海外経済の悪化、さらに日本銀行の政策修正を反映して、年末120円程度まで進むと見込まれる円高によって輸出環境は悪化し、さらにそれによって引き起こされる株価の下落が、個人消費にも悪影響を及ぼすのではないか。日本も景気後退に陥ると予想される」
そして、木内氏はこう結んでいる。
「2023年度の日本の実質GDP成長率見通しは、政府がプラス1.5%、民間の見通しの平均値はプラス1.1%(ESPフォーキャスト調査)であるが、筆者(木内登英氏)は1%を下回る可能性が高いとみている」
(福田和郎)