今回の交渉は、ルノー側から提案...背景に、EVシフトへの出遅れ
交渉には双方の都合があり、当然ながら、それぞれが納得してまとまる。資本関係見直しは日産側の悲願であり、その意味で日産の都合なのだが、今回の交渉は、意外にもルノー側がきっかけを作った。
関係者によると、ルノーが2022年初め、日産に「EV新会社立ち上げ」の方針を伝えて協力を求めてきたという。
この背景にあったルノー側の事情とは、欧州で急速に進む電気自動車(EV)シフトへの対応だ。
欧州でのルノーの販売シェアは最大手の独フォルクスワーゲンの半分にも満たず、EVでも出遅れている。巻き返すには経営資源をEVに集中する必要があると判断、そこで頼りにしたのが日産の資金と技術というわけだ。
要請を受けた日産は「資本関係の見直し問題の進展」を協力の条件にし、両社の協議が本格化した。
交渉にはルノーの筆頭株主のフランス政府の影もちらついたが、23年1月、マクロン仏大統領は岸田文雄首相と会談した際、出資比率見直しを支持すると伝えたとされる。
フランス政府がルノーの日産への支配力の低下を容認した背景には、EV化競争を勝ち抜くには日産との協力が不可欠との認識がある。「3社連合が機能しなくなれば、ルノーがEV開発競争から脱落し、自動車産業に従事する国内の雇用にも響くことをフランス政府は何よりも恐れた」(業界関係者)との見方が一般的だ。
交渉で最後まで障害になったのが、昨秋の記事でも指摘した知的財産の扱いだった。
ルノーのEV新会社には米国の半導体大手クアルコムも出資し、ルノーは米グーグルとの協業も進める方針だ。日産は技術が第三者に流出することを警戒した。最終的にルノーが、新会社での知的財産の利用を制限する譲歩案を提示し、折り合ったという。