総務省が発表した住民基本台帳に基づく2022年の人口移動報告によると、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が3万8023人と、3年ぶりに拡大したことが分かった。
また、東京23区は2年ぶりに転入超過になった。新型コロナウイルス禍を機に東京を離れる人が増え、東京への一極集中が解消に向かうかもしれないとの期待も出ていたが、コロナ禍が落ち着くにつれ、人の流れは再び東京へと戻っているようだ。
転入者が転出者を2万1420人上回り、1年で「転入超過」に戻った東京23区
東京都の転入超過数は、コロナの感染が拡大する前の2019年には8万2982人に達していた。だが、20年の転入超過数は3万1125人、21年はわずか5433人にまで縮小した。
コロナ禍により感染予防の一環としてテレワークが急速に拡大し、多くの人にとって通勤に便利な都内に住む必要がなくなった。
企業によっては、社員の居住制限を撤廃し、どこに住んでも構わない仕組みを導入する動きも生じ、環境の良さや広い住宅を求めて近隣の市町村や地方都市に移り住む人が増えたことが大きな要因とみられていた。
こうした状況から「長年の懸案だった東京一極集中は解消される可能性がある」との期待を込めた見方もあった。
しかし、今回の報告によれば、22年の東京都への転入者は43万9787人で、前年より1万9620人増加した。逆に転出者は40万1764人で、前年から1万2970人減少した。
特に注目されていたのが、東京23区だ。
21年には転入者より転出者の方が1万4823人多く、初めて「転出超過」となったからだが、22年は一転して、転入者が転出者を2万1420人上回り、転入超過に舞い戻った。転出超過はわずか1年のデータに過ぎなかった。
東京圏全体で転入超過 拡大が最も大きいのは25~29歳
一方、東京都と密接に関係する東京圏全体(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)で見ても、2022年の転入者は45万9077人、転出者は36万4666人で、計9万4411人の転入超過だった。ただ、4都県のうち、前年に比べて転入超過数が拡大したのは東京都のみ。3県は縮小した。
東京圏の動きを年代別で見ると、転入超過の拡大が最も大きかったのは25~29歳。21年には転出超過だった30~34歳も、22年には転入超過に戻った。25~29歳は大学を卒業し、就職などをきっかけとした移転、30~34歳も仕事に関する移転が多いとみられ、働く若い世代が地方から東京圏に移っている様子がうかがえる。
ある不動産関係者は「この1年ぐらいでテレワークから出社に戻す人が明らかに増えている。東京からの人の流出はコロナ禍による一過性のもので、一極集中を解消するには抜本的な対策が不可欠であることが改めて示されたという結果ではないか」と話している。(ジャーナリスト 白井俊郎)