待ったなしの「脱炭素経営」...対応しなければ、ビジネスができなくなる? そして、「脱炭素」時代の成長戦略とは?/野村総合研究所・小野尚さんに聞く

提供:RX Japan
「多くの企業は現在、社会課題の解決をめざすカーボンニュートラルへの取り組み、収益化できる仕組み――この両輪で進める脱炭素経営が求められています。また、自動車や機械メーカーが気にかけているのが、欧州で近く始まる『欧州バッテリー規制』や『国境炭素税』をにらんだ対応。待ったなしの脱炭素への取り組みは、さらに加速していくと思います」
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   こう語ったのは、野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 パートナーの小野尚(おの・ひさし)さんだ。ビジネスコンサルタントとして国内外の企業、ステークホルダーら関係者とのディスカッションを通じ、日本企業の脱炭素脱炭素経営に対する切迫感は増している、と小野さんは指摘する。

   今回、2023年「脱炭素経営EXPO 春展」(2023年3月15日~17日/東京ビックサイト)の基調講演にも登壇するキーパーソン・小野さんに、企業を取り巻く「脱炭素」の動向、そして、「脱炭素」時代の企業の成長戦略をテーマに話を聞いた。

  • 野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 パートナー・小野尚さん
    野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 パートナー・小野尚さん
  • 野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 パートナー・小野尚さん

気候変動によるリスク情報の開示、「プライム市場企業」に実質的な義務付け

――まずは、脱炭素、脱炭素経営を取り巻くビジネス環境を教えてください。

小野尚さん「2020年秋、当時の菅義偉総理による『2050年のカーボンニュートラル宣言』がきっかけとなり、コンサルタントとして私も、多くの企業関係者と脱炭素経営について議論やヒアリングを重ねてきました。
みなさんとの対話を通じて、進むべき脱炭素経営のポイントは、2軸あると考えています。
1つ目は、深刻化する気候変動問題の解決をめざして、あらゆる企業が力を発揮し、脱炭素社会を実現していくことです。次世代のためにも、イノベーションの創出、再生エネルギー活用などを含め、地球温暖化などへの対策は必須でしょう。2つ目は、やはり営利企業である以上、カーボンニュートラル(脱炭素)に取り組みながらも、収益の拡大を図ることも欠かせない視点です。この両輪をどう回していくか、両立させるかが今、経営者に問われている課題です」
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――カーボンニュートラル宣言から2年近くが経ち、経営者のマインドは?

小野さん「大きな方針だけが決まった2年前は迷いもありましたが、今は違います。どのように脱炭素を進めるべきか、まさに実行する段階にきています。その入り口として、関心が高いのは、GHG(温室効果ガス)排出量算定でしょうか。プライム市場企業には、気候変動によるリスク情報の開示が実質的に義務付けられており、その対応が不可欠です。先進的な企業では、削減目標の設定、削減計画の策定もどんどん進んでいます」

――GHG排出量はどのように算定するのでしょうか? また、課題は?

小野さん「GHG排出量は、国際基準の『GHGプロトコル』にもとづいて算定するものです。GHGプロトコルには、排出区分として、スコープ1(自社での直接排出量)、スコープ2(自社での間接排出量)、スコープ3(その他の間接排出量=自社排出以外で、調達や出荷などにかかる排出量)があります。
このうち、各社(の担当者)を悩ませているのが、スコープ3の算定。スコープ3は15のカテゴリーに細分化されているなど仕組みが複雑なうえ、排出情報について、取引先企業、パートナー企業などから広くデータを収集する必要があるからです」

――そうした課題に対して、NRIではどのような解決策やソリューションを考えていますか?

小野さん「そこで、GHG排出情報のトレース(追跡)を可能にする、SaaS型(クラウドサービス)のカーボントレーシングシステム『NRI-CTS』の開発を進めています。データ収集や算定の負担感を減らし、スコープ3の把握に役立つものです。2023年夏の正式ローンチに向け、実証実験を経て、開発は最終段階を迎えています。今回、『脱炭素経営EXPO 春展』(=下の囲み参照)にも出展して、アピールしたいと思っています」
◆野村総合研究所も出展する、日本最大の脱炭素経営の展示会「脱炭素経営EXPO【春】」
3年目を迎えた本展示会の見どころとは? 主催者の小笠原氏が語る

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3年目を迎える2023年「脱炭素経営EXPO 春展」(2023年3月15日~17日/東京ビックサイト)では、これまで以上に多くの方が来場される見込みです。
今、脱炭素経営について、ポジティブにとらえる動きが強まっているように感じているからです。大きな変革期には必ずピンチがあり、裏を返すとそれはチャンスでもあります。
たとえば今回、初出展の野村総合研究所(NRI)、三井住友銀行、総合商社の三井物産をはじめ、大手企業の出展が目立ちます。大企業も脱炭素をビジネスチャンスととらえる動きが形になってきた表れではないかと思います。
また、国際展としてのカラーが強まったことも象徴的です。環境意識の高い米カリフォルニア州からは、「気候テック」のベンチャー企業が来日。そして、同州のカーボンニュートラル政策をテーマに、官民の関係者らによるパネルディスカッションを開催します。政府と民間の両面からどう環境とビジネスを結びつけるか――この視点は、日本の政府・自治体や企業、起業を目指す人にとってヒントとなるはずです。
脱炭素とビジネスをどうつなげられるかは、ビジネスパーソン全員の喫緊の課題です。その解決の糸口が得られる2023年「脱炭素経営EXPO 春展」。リアル展示会にご来場いただき、脱炭素経営への取り組みを具体化する場にしていただきたいと思います。(「脱炭素経営EXPO」主催・RX Japan株式会社:小笠原徳裕)
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