進めてきた事業の多角化 EVや「メタバース」など新分野への投資も
では、吉田路線とはなにか。それは、平井一夫前社長からつながる、ここ10年のソニーの構造転換だ。
売上高構成を見るとはっきりしている。
2013年3月期は売上高の4割を占めていたエレキ事業(ソニーの祖業である家電など=エンタテインメント・テクノロジー&サービス)は、23年3月期は2割にとどまり、逆に、エンタメ事業(ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画)が売り上げの5割超を占める見込みだ。
平井社長時代はパソコン「VAIO」の売却、テレビの分社化、電池事業売却など赤字体質からの脱却を図った。
18年に、副社長として平井氏を支えていた吉田氏が社長に就くと、20年に金融事業のソニーフィナンシャル・ホールディングス(HD)を完全子会社化し、21年には社名を「ソニーグループ」に変更するなど、経営体制を再編してきた。
事業の多角化も推進し、課金型ビジネスへの転換も進めた。
新型コロナウイルス禍では「巣ごもり需要」を取り込んで業績を伸ばし、家庭用ゲーム機「プレイステーション5」やアニメ「鬼滅の刃」のヒットも追い風に、22年3月期は本業のもうけを示す営業利益が初めて1兆円を超え過去最高を記録した。
さらに、次のステップとして、電気自動車(EV)の合弁会社をホンダと設立し、インターネット上の仮想空間「メタバース」で海外のゲーム会社と協業するなど、新分野への投資を強めている。半導体でも、台湾積体電路製造(TSMC)との新工場建設も決めた。