大学生が「入社を決めた理由」が、大きく変化している。
人材の採用から定着、活躍までを支援するヒューマネージ(東京都千代田区)の「大学生の就職活動に関するアンケート調査 2023年度」によると、10年前の2013年の卒業生と今春(2023年)卒業する学生を比較した結果、入社先を決めた理由として長く第1位だった「社員の魅力」が、ほぼ半減した。2023年2月2日の発表。
今春入社予定の学生で最も多かった理由は、「事業内容」だった。同社は「就社から就職へ。就活生のキャリア観の変化があらわれた結果」と、指摘している。
就活生のキャリア観に変化が...
調査では、企業の内定者を対象に、「その企業に入社を決めた理由」(単一回答)を聞いたところ、最も多かったのは17.9%で「事業内容」だった。次いで「社員の魅力」が16.9%、「企業理念・価値観」が11.2%と続いた。
「社員の魅力」は2013年卒を対象に実施した調査以降、10年ものあいだ第1位だったが、今回初めて「事業内容」が最多となった。「社員の魅力」は10年前の29.1%から16.9%と、半分近くまで減少。一方、「事業内容」は11.0%から17.9%と6.9ポイント増えた。【図1参照】
この10年の変化をみると、その企業に入社を決めた理由として、長く第1位にあった「社員の魅力」や、第2位の「社風」は2013年以降、減少傾向にあり、その一方で「事業内容」がジワジワと増えてきたことがわかる。【図2参照】
ヒューマネージは、
「今年の結果だけをみると、就職活動がオンラインになったことや、社員とのリアルな接点が減ったことなど、コロナ禍の影響が思い浮かびますが、そうではなく、10年前からの推移をたどると、『社員の魅力』『社風』はずうっと減少傾向にあり、『事業内容』は増加傾向にあったことがわかります。
こうした要因は、この10年間で、いわゆる『就社から就職へ』と就活生のキャリア観が変化していることがあると考えられます。社会人として初めて働く会社、仕事を指す『ファーストキャリア』という言葉が一般的になり、新卒でどのような会社に入るか? 仕事をするか? はその後のキャリア形成において重要であるという認識が広がっています」
と指摘している。
大事なのは「働く社員が事業内容と自身のキャリアを伝えられること」
同社によると、昨今は企業の採用に対する考え方が変化しているものの、「ジョブ型雇用や新卒採用における配属先を確約する取り組みは、まだ一部の企業」としている。
それもあってか、「就活生も『職務内容=ジョブのレベル』で希望する仕事が明確になっているのは、ごく少数です。こうした状況で、現時点ではやりたいこと、自分にあった希望の仕事≒『事業内容』と捉えていると思われます」とみている。
また調査では、内定者から、
「事業内容がどのように役立っているかを説明し、そこにやりがいを感じている社員の様子に惹かれた」(入社予定先:素材・エネルギー・その他製造)
「事業内容はもちろん、社員の方々から感じる一貫した使命感ややりがいなどにも魅力を感じた」(入社予定先:金融)
といった声が寄せられ、「『事業内容』と『社員の魅力』はつながって存在していることがわかります」(ヒューマネージ)という。
同社は、採用した人材が入社後定着していくためには
「自社の事業内容に感じる魅力を、自分の言葉で語れること。事業内容から紐づけて、自分の仕事を、そしてキャリアを伝えられること。働く社員が事業内容と自身のキャリアを等身大に伝えられることが、ますます求められるのではないでしょうか」
とコメントしている。
なお、調査対象はヒューマネージの採用管理システム「i-web」を利用する企業の内定者で、2023年4月入社予定の大学生・大学院生。実施期間は、2012年6月~2022年11月。有効回答は7851人だった。
また、2013年卒は1774人、14年卒4322人、15年卒4761人、16年卒6021人、17年卒7802人、18年卒9425人、19年卒8821人、20年卒7983人、21年卒7020人、22年卒8314人から、有効回答を得ていた。