脱炭素社会に向け、加速する企業間の連携...どんな行為が独禁法にあたるか? 公取委で指針づくり進む

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サプライチェーン全体で取り組む脱炭素だが、親企業優位の力関係変わらず

   問題の二つ目は、大企業(親企業)と中小企業(下請け)の「縦の関係」――つまり「優越的地位の乱用」については、脱炭素を進めるうえで、大きな課題になる。これには、2つの側面がある。

   まず、親企業が部品などを納入する下請けに、省エネ効率のいい部品を作るよう求める場合だ。開発コストを価格に適正に反映する必要があり、文字通り、優越的な立場を背に、納入価格にコストの転嫁を認めない場合は、独禁法に抵触する恐れがある。

   もう一つは、下請け企業の生産過程のCO2削減要請だ。いまや、事業者は自分の排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した「サプライチェーン排出量」の削減が求められている。ようするに、原材料調達から製造・物流・販売・廃棄まで一連の流れ全体で発生するCO2を減らさなければならない。

   たとえば自動車部品を組み立てる完成車メーカーは、自社の組み立て工場で使う電気だけでなく、下請けの部品メーカーが使う電気や加熱のためのガスなど分も含め、全体のCO2排出削減が必要になる。そこで、親企業は下請けにもCO2削減を求めるが、そのためのコストを価格に適正に反映する必要がある。

   ただ、この「優越的地位」は現実にはあいまいな領域で、親企業が下請けに対して圧倒的に優位という力関係が変わらないなか、中小企業問題の永遠のテーマでもある。

   かつては、親企業が下請けに、従来より引き下げた納品価格の一覧表を渡して強制するようなことが横行していた。だが、当局の監視の目が厳しくなると、実質的には内々に価格を指示しておいて、形の上では下請け側から新しい価格を提案させるやり方になっているといった話が絶えない。

   さらに、「CO2削減にむけては、親企業から下請けに、製造工程全般に関する細かい調査(アンケート)の報告などの作業も膨大になっている」(中小企業関係者)ともいう。

   公取委の指針が、新製品開発など目に見えるコストには適用されても、そうした調査など「目に見えにくいコスト」を含めてカバーするのか、関係者は今後の議論を注視している。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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