複数の企業間で「示し合わせる」行為は、違反の可能性
まず、「横の関係」は、脱炭素の実現に大手企業間の連携が重要になる。
これについて、たとえば複数の大手電力会社が、CO2が出ない水素・アンモニアなど脱炭素燃料を共同調達する例を挙げ、燃料代全体に占める割合が小さい段階など一定の条件下であれば問題ない、との見方を示した。
脱炭素に貢献する製品・技術に使う希少な原材料は調達が不安定なことや、割合が小さいうちは新規参入や自由な価格決定を阻害する恐れは少ないことを考慮したとみられる。
競合企業による共同の研究開発も、技術革新につながるなど多くは競争を促進することから問題となる可能性は低い、と指摘した。
ただ、複数の企業が共同研究でCO2排出削減の新技術を開発した場合、示し合わせたうえでその技術を使った商品の価格を上げればカルテルに当たる可能性がある。さらに、より高度な技術を開発できるのに、コスト増を懸念して、カルテルを結んで開発を控えるのは、当然、違反の可能性が高い。
これは、たとえば2021年、ドイツの大手自動車メーカー5社が、排ガス浄化性能のより優れた自動車を開発できたのに談合して開発を控えたとして、欧州委員会からカルテル認定されたケースもある。
CO2排出が多い古い生産設備を競合企業同士で協調して、いっせいに廃止する行為については、独禁法で問題になる恐れがあるとした。示し合わせることなく、独自の判断で廃止することは問題ない。
この背景として、電力会社が石炭火力発電所をいっせいに廃止することなどが念頭にあり、廃止が遅れたり、価格競争を控えたりする副作用を防ぐ狙いがある。
こうした設備の共同廃棄は、1960~70年代の日米繊維摩擦などもあって、繊維産業が「構造不況業種」となるなかで実施されたが、独禁法違反を避けるために特別法(臨時措置法)を作って行われた。