2023年、いま「本気」で住みたい街はどこ?!
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」を運営するLIFULL(東京都千代田区)は2023年2月10日、「2023年 LIFULL HOME'S みんなが探した!住みたい街ランキング」を発表した。首都圏にて借りて住みたい街は、3年連続で「本厚木」がナンバー1に。買って住みたい街は、4年連続で「勝どき」が1位に輝いた。
同日行われた発表会では、LIFULL HOME'S総研 副所長/チーフアナリストの中山登志朗さんが登壇し、「傾向として、借りて住みたい街は、依然として都心から郊外へという流れは変わっていない。一方の買って住みたい街は、郊外と都心部の二極化が鮮明になってきている」と住まい探しの動向を解説した。
では、気になるランキングの結果はいかに?
【借りて住みたい街】利便性、コストのバランス取れた「郊外エリア」が人気
「LIFULL HOME'S みんなが探した!住みたい街ランキング」は、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」に掲載された物件のうち、2022年の1年間における実際の問い合わせ数から、ユーザーの「本気」で住みたい街を算出。住まい探しの「いま」がわかるランキングとなっている。
まずは、借りて住みたい街ランキング(首都圏版)を見てみよう。その結果、トップ10は、1位:本厚木、2位:大宮、3位:八王子、4位:柏、5位:三鷹、6位:葛西、7位:川崎、8位:町田、9位:蕨、10位:西川口だった。【図表1】
借りて住みたい街では、利便性やコストのバランスが取れた郊外エリアが人気だという。3年連続トップとなった神奈川県の「本厚木」は、まさにこの条件にぴったり。交通の便がよくて都心部にアクセスしやすく、駅周辺は商業施設が充実している。
また、傾向として、「大宮」「八王子」「柏」「三鷹」など、準近郊や郊外の駅が上位を占めたことなどから、前年よりもさらに賃貸ニーズが郊外化しているという。コロナ禍以降のテレワークの定着にくわえ、このところの消費者物価の上昇などにより、当面も「都心から郊外へ」という動きが続きそうだ。
一方で、前年から順位を大きく上げた、急上昇ランキングのトップ5を紹介すると、笹塚(114位→71位)、所沢(94位→54位)、町屋(121位→86位)、中野坂上(109位→75位)、鶴見(73位→41位)となった。これらのエリアは、「次にくる街」として注目度が高くなりそうだ。【図表2】
ランクアップの背景には、交通利便性とのバランスにくわえて、昨今の円安、サプライチェーンのひっ迫による消費者物価高騰の影響などから、利便性のわりに、賃料相場が比較的安価なエリアなことが挙げられる。
こうした結果を踏まえ、発表会で中山登志朗さんは、次のように指摘した。
「(借りて住みたい街では)依然として、都心から郊外へという流れは変わっていません。いま、消費者物価が上がっていることにくわえて、テレワークの定着から、高い賃料を払って都心に住むメリットはかなり薄れてきている印象があります。そのため、ランキングの上位を見ると、昨年よりもさらに郊外化しています。都心の一等地、つまりコロナ禍前は人気のあった駅が上位に回復する兆しは、いまのところは見えていません」
【買って住みたい街】神奈川県の人気エリア「横浜」「平塚」「茅ケ崎」がそろって上位
つづいて、買って住みたい街ランキング(首都圏版)では、トップ10は、1位:勝どき、2位:横浜、3位:平塚、4位:茅ヶ崎、5位:田町、6位:本厚木、7位:八街(やちまた)、8位:大宮、9位:八王子、10位:千葉となった。【図表3】
勝どきは、4年連続で1位に輝いた。背景として、「東京五輪」の終了後も、販売される物件のグレードや価格、物件の広さ、販売動向などへの関心が引き続き高いためだ。また、ランキングを詳しく見ると、順位を上げた駅として、「田町(61位→5位)」、「半蔵門(240位→11位)」、「浜松町(188位→25位)」、「麻布十番(338位→28位)」、「駒込(117位→31位)」などが目に付く。これらは、いずれも新たな大規模な物件開発があったために、エリアよりは物件自体が注目されたとみられている。
神奈川県の人気エリアの「横浜」「平塚」「茅ケ崎」がそろって上位となったのは、今回の大きな変化。要因としては、都心の新築タワーマンションが億を上回る価格帯で販売されるようになったことに対して、湘南エリアは比較的手の届きやすい価格帯だからだ。今後も、資材価格やエネルギー価格の高騰から、新築住宅の価格引き上げにつながりそうなことから、比較的に安価な準近郊・郊外での住まい探しは増えると予想されている。
そして、前年から順位を大きく上げた、急上昇ランキングのトップ5を見ると、神保町(1210位→91位)、お茶ノ水(493位→38位)、西新宿五丁目(527位→82位)、麻布十番(338位→28位)、広尾(359位→51位)が並んだ。【図表4】
「次にくる街」として注目度が高いこれらのエリアは、トップ10まで含めすべて、都心に位置する駅ばかり。コロナ禍で需要が落ち込んだとされる都内の各駅も、周辺で開発プロジェクトが始まったことで、話題性が高まっているようだ。中山登志朗さんは、次のように総括した。
「(買って住みたい街では)コロナの影響は若干薄れ、ウィズコロナの時代になったこともありますが、住宅価格の高騰、テレワークの定着によって、探す家の郊外化は昨年と変わらない傾向です。一方で、スペックの高い東京の都心部、そして近郊のベッドタウンなども徐々に揺り戻しで高まってきています。こうしたことから、郊外と都心部の二極化は鮮明になってきています」
この日は、中山さんと、評論家・編集者の山田五郎さんによる「住みたい街トークセッション」も実施。ランキングの結果を見て、山田さんは「(借りて住みたい街の結果に)堅実ですね(笑)。買うのはムリでも、借りるときは、もう少し浮ついた街を選ぶのかなあと思っていたんだけど」と驚きの様子。そして、「この堅実さを見ると、だんだん穴場のエリアが注目されて、ねらわれてくるんじゃないかな」、住まい選びでは「名より実をとったほうがいい」と話した。
一方、中山さんは、「住みたい街」の話題で、
「経済効率性を考えたとき、東京都心部のマンション価格は急激に上がってしまっています。そこまで高くなってしまうとさすがに手が出ないので、現実的に考えると(買って住みたい街で1位に輝いた)勝どきはいいと思います。(勝どきは)選手村の跡地で、物件も広くてスペックが高い。そのわりに、東京都心部の物件と比べたら、価格は抑えめ。勝どきが注目されているのは、そうした現実的な目線があると思います。いま、みなさん、コスパということをすごく意識されているので」
と話していた。
今回の詳しい結果は、「2023年 LIFULL HOME'S みんなが探した!住みたい街ランキング」のサイトから確認できる。こちらでは、「首都圏」のランキングにくわえ、「近畿圏」「中部圏」「九州圏」それぞれのランキングも掲載している。
なお、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」では、賃貸、一戸建て・マンションの購入、注文住宅から住まいの売却まで、物件や住まい探しに役立つ情報を発信中。コンセプトは「叶えたい!が見えてくる。」。