「年収が夫の2倍になりそう。夫のプライドを傷つけずにすむ方法ってある?」
そんな悩みを訴える女性の投稿が炎上気味だ。女性は成果主義の企業で働く専門職。夫は年功序列型企業で働くサラリーマン。年収の差がどんどん開く一方だという。
「男はプライドの生き物。金額を言ってはダメ」という意見と、「自分に誇りを持って堂々と言おう」という意見で賛否がわかれる。
仕事ができる妻の前に「夫のプライドの壁」が立ちはだかり、問題をややこしくしている。専門家に聞いた。
「夫は収入が私より少ないことに引け目を感じている様子」
話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2023年1月19日付)に載った「夫と差がついていく年収。プライドを傷つけないようにするには?」というタイトルの投稿だ。
投稿したのは、20歳代の夫婦共働きの女性。子どもはいない。ざっとこんな内容だ。
「夫は年功序列の企業、私は成果主義の企業に勤めており、技術職かつ年上のこともあり、年収は私のほうが多いです。夫の年収は、世の中的に見れば普通かそれより多いほうだと思います。夫は自分の収入が私より少ないことに引け目を感じている様子です」
そこで、悩みの相談というのがこうだ。
「私の年収が大きく上がる可能性が出てきました。このとき、みなさんなら夫に正直に話しますか? 年収が上がった場合、私の年収は夫の年収の倍程度になります。
夫にこれ以上引け目を感じさせたくはありませんが、かといって黙っているのも後々バレたら問題になりそうで悩んでいます。稼ぎを減らすのは、今後子どもを持つことや老後を考えると避けたいです」
そして、どうやって夫のプライドを傷つけずに年収のことを伝えたらよいか、と訴えているのだった。
「男性ってこと稼ぎに関してプライドが高く、傷つけられると卑屈になる」
この投稿に対しては、「男はプライドの生き物。金額は言わないほうがいい」という意見が非常に多かった。
「男の人って、こと稼ぎに関してはとってもプライドが高く、傷つけられると凹(へこ)んで卑屈になってしまう人が多いような印象です。あなたの年収が自分の倍になるなんて知りたいでしょうか。なので、増えた金額分はなかったものとして、投資か貯金に回すのがベストだと思います」
「申し訳なさそうに言うのも違うし、どんな顔で言うのですか? 夫がどう受け取るかもわからないことを、黙っているのは気が引けるから楽になりたいという理由で言うなら、やめておいたほうが無難です。かしこまって『給料があなたの倍になりました』なんて言う人なんていないと思います」
年収が低い夫に気を使って、仕事を辞めたという人もいた。
「うちの夫もご主人タイプ。独身時代は私のほうが上でした。だから、私は辞めました(笑)。そのほうが、夫が伸びると思ったから。結果、上位3%の高所得者層に。男のプライドって大事。で、今、私は社会復帰しています。私なら秘密にする。そして、ご主人のおかげで生活ができるとねぎらう。いつか、あなたの年収を超えてもらえばいい」
そして、具体的にこうアドバイスする人もいた。
「嘘はつかず、非開示ということで。もちろん、夫も非開示です。家計にいくらずつ入れるかを決めて生活しましょう。将来の家族の状況により、家計にいくら入れるかは毎年見直しましょう。資産形成は、お互いが自分で自分の面倒を見るようにすればよいと思います。」
「私はハイリスクハイリターン、あなたはローリスクローリターン。すごくバランスがよいね!」
実際に、投稿者同様に年収が夫より上の人からは、夫の「ビミョーな反応」の数々が報告された。
「最初は夫のほうが高かったのですが、私の昇格で越しました。昇給が嬉しくて報告していた時もありますが...。いつからか、全く話さなくなりましたね。
歳をとって、夫も『妻が安定して稼げること』を喜ぶようになりました。競うのは若いうちだけかもしれません。ただ、住宅ローンを組む時、子どもが保育園に入る時など、世帯年収が基準になる瞬間があります。上手くコミュニケーションを取れることを祈ります」
「私(専門職)と彼で2倍弱の開きがあります。彼にはすべて正直に伝えてありますが、何とも思わないどころか、『お互い、何があっても安心だね~』とノホホンとしています。ただ、年収の話になるときは、謙遜を含めたフォローを入れています。というのも、彼のホンネは分からないし、本当は内心モヤモヤしている可能性があるので。
たとえば、『あなたが一緒になって家のことをやってくれる人だから、私も稼げる』『私はハイリスクハイリターン、あなたはローリスクローリターン。すごくバランスがよいね!』などです」
「私も同じ状況ですが、報告せずに黙って有事(離婚など)のためにも、ヘソクリにしています。そのほうが夫を尊敬していられるし、自分も嬉しいし、いいことづくめですよ!」
私が夫なら「こんなにデキるのに、妻になってくれてありがとう」と言う
一方で、「事実を素直に言おう」という意見も多かった。
「素直に言うことをおススメします。私が旦那さんだったら『すごいなー、こんなにデキる人なのに、妻になってくれて本当にありがとう』と言います。引け目は感じると思いますが、愛情は変わりません。妻の年収が上がろうが、宇宙飛行士になろうが、オリンピックに出場しようが、愛情は変わらないです。あなたが選んだ旦那さんですから、信じてみてはどうでしょうか」
「プライドを傷つけないのは、無理じゃないかなと思います。学歴とか年収とか、気にする人はトコトン気にします。何をどう言ったって現実は変わりません。私なら、淡々と事実を告げます。申し訳なさそうに言うのも逆にプライドを傷つけるだろうし、偉そうにするのもよくない。なので、感情を入れずに淡々と」
また、子どもができて産休育休をとったら、年収が減るかもしれない。「しばらく様子をみてはいかが」という意見もけっこう多かった。
「成果主義なら産休育休、そして時短の時は下がるでしょ。旦那さんはこれから上がることはあっても下がらない。だから長い目で見たら、旦那さんのほうが生涯賃金は高いかもしれませんよね」
「今後、妊娠出産という、夫婦生活の一大イベントが訪れる可能性があるので、その時はあなたの年収はストップしてしまうはず。それを考えれば、多少差が開いても、ご主人のプライドはあなたが考えているよりも、傷は深くはならないと思います。お金の話しばかり考えているより、2人の時間を楽しむことも考えたほうが幸せだと思います」
夫の面目を立てる「画期的な解決案」を実践している人から、こんな提案も――。
「わが家も私のほうが夫の倍以上の収入があります。うちの解決案は共同名義のクレジットカードです。メインの契約者は私。したがって本当の支払いは私です。カードはそれぞれの名前で2枚来ますので、他人には共同名義であることはわかりません。
外食、お買い物は常に夫がこのカードを使って支払います。表向きは何でも払ってくれる優しい夫となるわけです。ニコニコと、そう本当に優しいのよと微笑んでいればよいのです。うちはこれで全て円満です」
「成果をあげている喜びを、夫と分かち合えない寂しさ」
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、年収が夫の2倍になりそうな女性が、どうしたら夫のプライドを傷つけずに、そのことを伝えたらよいか悩む投稿をめぐる論争について、働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。
――今回の投稿と、回答者たちのさまざまな意見を読み、率直にどのような感想を持ちましたか。
川上敬太郎さん「投稿者さんは成果主義の企業に勤めていて年収が高く、さらに年収が増えそうとのこと。それは、投稿者さんが相応の成果を出して認められている証拠であり、素晴らしいことだと思います。それなのにその喜びを夫と分かち合えない投稿者さんは、内心寂しい思いをされているのではないかと感じました。
しかし、その寂しさは、投稿者さんの優しさや思いやりの裏返しでもあるのだと思います。その尊い感情は美しいと思うものの、優しさや思いやりが投稿者さん自身を苦しめてしまうようなことにならなければと思いました」
このあとも、川上さんのアドバイスが白熱します――。<「年収が夫の2倍に...彼のプライド傷つけそう」成果報酬でバリバリ稼ぐ女性の投稿が炎上気味、「隠すべきか」「伝えるべきか」で賛否...専門家に聞いた(2)>に続きます。
(福田和郎)