ブランド力は、社員一人ひとりがつくっていく
――どのようにブランド力を養えばよいのでしょう。
岡氏「どうやってブランド力を高めればいいかわからない、大手企業はどうやって価値を高めているのか知りたい。そう考えている中小企業経営者は少なくありません。そして、大手企業はウチをどう見ているのか、提案は受け入れてもらえるのだろうか。おそらくそのあたりが、多くの中小企業の経営者の悩みのタネになっているのではないでしょうか。
たとえばブランド力を商品で捉えると、やはり知名度が高いかどうかが気になりますよね。しかし、仮に100人でも『あの商品じゃないとイヤ』という人がいれば、それがブランド力なんです。商品価値を少しずつ高め、知名度を広げていくことで、10年、20年、30年と、ブランド化されていくわけです。
だからといって10年も20年も、ただ時間が経つのを待っていればいいというわけではありません。そのブランドを育てなければ、価値は上がらないのです。では、なにが大事か。それは『企業の価値が問われている』ことを、社員一人ひとりが常に意識しているかどうかということです」
――具体的には、どのようなことがありますか。
岡氏「たとえば、ある中小企業では工場も事務所も清掃が行き届いていて、いつもピカピカです。そのことが自然と、口コミで話題になっているんですね。『そんなことで...』と思われるかもしれませんが、そういう誰にでもできることをきっちりやっていく。しかも、それを意図的にやっていくことで、ブランド化していくことがポイントです。意識して取り組んでいかないと、ブランドとして育ちませんからね。
意図をもって続けていくと、どこからともなく反響があって、誰彼ともなく評価してくれるようになります。いい評判を呼び、仮に他社と同じ商品であっても高く売れるようになる。すると、プレミアムがついて商品価値が高まり、ブランド力がついてくる。
そういった好循環が生まれるようにするには、やはり社員一人ひとりが、お客様のためにどうしたらよいのか、もっとこうしたら良くなるんじゃないか、と考えて行動する。レベルアップしていく気持ち、その襷をつないでいくしかありません」
ブランド力を高めていくうえで、具体的にはどのような取り組みが必要なのか――。<大手企業が取引したくなる「中小企業がやっていること」教えます!/岡俊明・元サッポロビール飲料社長インタビュー(下)>に続きます。
【プロフィール】
岡 俊明(おか・としあき)
1967年サッポロビールに入社。ビール営業本部商品企画部長、京都支社長などを歴任して2000年に取締役。常務取締役、専務取締役ビール事業本部長を経て、03年にサッポロビール飲料(現:ポッカサッポロフード&ビバレッジ)代表取締役社長に就任。その後、09年に群馬大学客員教授、10年長岡大学経済学部教授、11年大妻学院理事。12年にハルナビバレッジ社外取締役。現在は、株式会社エスイー取締役、群馬大学講師、大妻学院・大妻マネジメントアカデミー講師、一般社団法人日本営業科学協会代表理事などに従事。商品開発やブランドマーケティングに強み。
2023年2月24日に、「元大手企業経営者から見た『大手企業攻略法』~大手企業に販路を拡大するために~」(主催:東京都中小企業振興公社)をテーマに、無料オンラインセミナーに登壇する。