中国に代わる存在、インドへの期待が一気に冷める危機
木内氏はリポート「世界の金融市場に広がるインドのアダニ・ショック」(2月8日付)のなかで、インド市場全体の信頼性を損ねる事態に発展していると指摘した。
「不正疑惑問題は、グローバルな投資家に影響を与えているのみならず、インドの金融システム上の問題も浮上させている。アダニ・グループの一部は、財務がより健全なグループ企業の株式を借り入れの担保としている。こうした株式の価値はすでに急落しており、貸し手から追加の担保を要求される事態も起こり得る状況だ。
中央銀行のインド準備銀行は国内銀行に対して、アダニ・グループへの融資状況を説明するよう求めたと報じられた。アダニ・グループのドル建て債券の償還も近づいている。
仮にアダニ・グループに債務不履行などが生じれば、それは国内銀行の不良債権の拡大につながり、金融システムの安定を損ないかねない」
「インドの市場規制当局はアダニ・グループの疑惑を調査中だ。アダニ・グループの債務の大部分を保有する外国人投資家は、規制当局が疑惑を徹底的に調査したと確信するまでは、新たな資金の提供を控えるだろう」
では仮に、当局が不正疑惑を晴らすことができない場合はどうなるのか。木内氏はこう見ている。
「アダニ・グループのみならず、インドの証券市場全体の信頼低下につながるのではないか。世界で権威主義と民主主義の分断化が進む中、2023年年初に人口で中国を追い抜いたとされるインドに、生産拠点や投資先で中国に代わる存在になるとの期待が、先進諸国に強まっている。
アダニ・グループの不正問題の行方は、そうした期待を一気に冷やしてしまう可能性を秘めているだろう」