「インド発世界金融危機迫る?」巨大新興財閥に「不正会計疑惑」株価下落、GDP1%分の負債...エコノミストが指摘「癒着したモディ政権ともども沈没か」

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空売りの米投資会社が暴いた「不正告発」でGDP1%分の損失

経済都市ムンバイの夜景
経済都市ムンバイの夜景

   ヒンデンブルグは、事業に虚偽があったり、投資家を誤認させたりしているとみられる企業を徹底調査し、株式をショートして(売って)稼ぐ。2020年に「テスラ」のライバルだったEVメーカー「ニコラ」の疑惑を告発、株価を急落させたうえ、創業者を辞任に追い込んだことで知られている(創業者は2022年10月、詐欺で有罪判決)。

   ヒンデンブルグは1月24日、「空売りのポジションを取っている」ことを宣言したうえで、「企業史上最大のペテン」として、アダニ・グループが数十年にわたり行ってきたという不正会計、株価不正操作の疑惑を詳細な報告書にまとめ、88項目の質問状を添えてネット上に公開した。

   アダニ・グループが多数のダミー会社を使って株価を実態以上に膨らませたり、タックスヘイブン(租税回避地)に設けたペーパーカンパニーを使って会計操作したり、一般投資家の保有比率を最低25%とするインドの株式保有規則を破ったりしていると非難した内容だった。

首都ニューデリーのインディアゲート
首都ニューデリーのインディアゲート

   これに対して、アダニ・グループは1月29日、「悪意に満ちた報告だ。我々は法令を守っている」などと不正を一切否定する413ページの反論書を発表したが、金融市場に与えた衝撃は大きかった。ヒンデンブルグの指摘の是非はともかく、海外投資家からは巨大財閥が牽引するインド経済や株式市場に向ける目が厳しくなり、通貨ルピーとインド株の下落傾向が収まらない状態だ。

   アダニ・グループの時価総額は2月6日までに約9兆1000億ルピー(約14兆円)減少し、半分以下になった。増資の撤回に追い込まれ、グループ上場10社の負債総額は5兆円超となり、インドの名目GDP(国内総生産)の1%を上回る規模となった。アダニ氏個人の資産も約40%減少、世界富豪ランキングも10位に転落した。

   影響は株価だけにとどまらない。アダニ・グループとモディ首相の「癒着」を問題視する声が野党から上がり、議会調査委員会の設置を求める動きが始まっている。また、ニューデリーでは市民の抗議デモが発生、警官隊と衝突する騒ぎも起こっているという。アダニ・グループは、インド国内の高速道路や空港、世界有数のインフラ整備を進める企業として台頭してきただけに、インド経済に与える影響も大きい。

   こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。「インド発金融ショックになりかねない」と懸念を示すのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

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