日銀新総裁に求められるインフレ対策
「週刊エコノミスト」(2023年2月14日号)の特集は、「日銀大検証」。日銀の総裁が10年ぶりに交代する。黒田東彦総裁による異例の金融政策は、日本経済に何をもたらしたのか、そしてこの先何が起きるのか、レポートしている。
次期日銀総裁には、雨宮正佳副総裁や前副総裁の中曽宏氏、元副総裁の山口広秀氏ら日銀出身者のほか、元財務官の浅川雅嗣氏らが候補に挙がっている。すでに人選を終えているはずの岸田首相の念頭にあるのは「インフレ」対策だという。
日銀が、異次元緩和の出口を目指すと同時に、市場や金融機関の経営に悪影響が及ばないようにするには、国債の買い入れ額をいったんは増やしつつ、減らすタイミングを模索する運営を粘り強く継続する必要がある、と見ている。
元日銀理事の山本謙三氏は、「約10年間、正常ではない政策を続けてきたのだから、(出口までに)同様に10年近くかかるのではないか。相当の長期にわたることは間違いない」と語っている。
日銀は現在、約36兆円の株式を保有している。中央銀行が民間企業の株式を購入する事例は他の主要国では皆無だと、infinityチーフエコノミストの田代秀敏氏は指摘する。
「ガラパゴス化」した日銀が、国債や株式を大量購入した結果、競争的な市場の「価格発見機能」はほとんど麻痺してしまい、日銀は「通貨の番人」ではなく「市場の看守」になってしまった、と批判する。
日銀が弥縫策を重ねても、金利はもはや制御不能であり、「地獄への扉」が日銀に向かって開こうとしている、との断言も。
日本総合研究所調査部主席研究員の河村小百合氏も「資産膨張で利上げ不能になり、インフレ、財政破綻が待つ」とインタビューに答えている。
まもなく発表される日銀新総裁人事。新総裁を容易ならざるハードルが待ち構えているようだ。(渡辺淳悦)