米国経済への投資はすでに「逆ざや」、景気後退目前か
エコノミストはどう見ているのか。
ヤフニュースのコメント欄では、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏が、
「1月米雇用統計は、雇用者数は前月比プラス51.7万人と市場予想(プラス18.8万人)を極めて大幅に上回りました。失業率は3.4%へと低下(12月は3.5%)。賃金インフレの帰趨を読むうえで重要な平均時給は前月比プラス0.3%、前年比プラス4.4%でした。賃金上昇率は緩やかな鈍化傾向にありますが、パンデミック発生前の3%台前半までは相当な距離があり、インフレ抑制にはなお『高すぎる』状態にあります」
と、問題はインフレの高すぎる水準にあると指摘。つづけて、
「1月雇用統計はFRBの悩み事であるインフレのしぶとさを痛感させる結果でした。筆者(=藤代宏一氏)は3月FOMCにおける追加利上げ(0.25%ポイント)によってFF金利(誘導目標レンジ上限)が5.00%に達したところで利上げが終了すると予想していますが、2月に発表されるデータが強含めば5月FOMCまで利上げが長引く可能性が高まります」
と、今後の経済指標によっては利上げが長引くと予想した。
同欄では、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト渡辺浩志氏が、
「強い雇用統計が市場の楽観(早期利下げ期待や金融環境の緩み)に修正を迫っています。2月1日のFOMC後の会見で、パウエル議長がモノのインフレ鈍化を認めたことで、市場はFRBのハト派転換を期待、3月で利上げを打ち止めにし、年後半に計0.5%の利下げを行うとの予想に傾斜しました。しかし、今回の強い雇用統計に表れた労働市場の逼迫は賃金上昇率を高止まりさせ、サービスのインフレを長引かせます。FRBが表明した『継続的な利上げ』の方針が再認識されています」
と、賃金インフレが収まらない現状を指摘。つづけて、
「市場は5月までに5.125%への利上げを約6割織り込み(雇用統計前日は3割)、年後半の利下げ期待は幾分後退しました。政策金利は既に4.6%と、米国の名目潜在成長率(4%)を超えています。政策金利を投資コスト、名目潜在成長率を投資リターンと考えれば、米国経済への投資は既に『逆ざや』。これが長引けば米国が景気後退を免れることは難しいでしょう」
と、米国の景気後退が目前に迫っていると指摘した。