音楽ストリーミングサービスの普及によって、曲のつくり方が変わってきた

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デジタル化が遅れた日本の音楽市場

   日本の音楽業界はCD販売に長く支えられ、世界で最もデジタル化が遅れた、と指摘している。CD売上は1998年をピークに長期低落。2014年にはコンサート入場売上がCD売上を上回った。コンサート市場は成長を続けたが、コロナ禍で致命的なダメージを受けた。

   2023年から復活予測のコンサート入場料収入とデジタル市場の伸長が、今後の音楽業界のカギを握っているという。

   日本の音楽市場のデジタル化が遅れたのは、CDビジネスを延命させようとしたからだ、と見ている。大手レコード会社はiTunesに非協力で、安価なレンタルCD店の存在がiTunesの価格競争力を奪った。さらにレコード業界は、Spotifyとの許諾交渉を長引かせ、サービス開始が遅れたという。

   2021年の日本の音楽市場におけるストリーミング比率は34.4%だ。これは、アメリカ市場の2015年の比率と同じで、約6年遅れている。日本のデジタルサービスが遅れたことで、長期低落が続いている、と批判的な見方だ。

   デジタル化によって音楽活動はあらゆる面で、個人でも行えるようになった。音楽体験も、音楽創作、原盤制作も個人の側に比重が移り、音楽家のアマチュアとプロの境界は曖昧になり、商慣習も変化しているという。

   デジタル時代を象徴する新現象をさまざま挙げている。

   たとえば、インディーズ楽曲ながらネット上で大きな話題となり、紅白出演に至るまでヒットした瑛人の「香水」。TikTokやYouTubeがバズった要因だとしている。

   また、1979年リリースの松原みき「真夜中のドア~Stay with me」がSpotifyバイラルチャートで長期間1位を記録したのは、サブカル音楽ファンの地下ブームが、コロナ禍に重なり、サブスクに乗って浮上した、と見ている。

   今後、日本の音楽業界を「拡張」するだろうパイオニア16人を紹介している。

   デジタル世代向けのチケット事業を行う人、個人で活動するDIYアーティストを支援する人、日本独自の業態である「事務所」の変革を進めようとする人......デジタルだからこそ出来る、新たな挑戦が取り上げられている。

   山口さんは「音楽業界の迷走は、日本の産業界のあちこちに見受けられる典型的な負けパターン」としながらも、随所で「再生」のヒントを示している。音楽に限らず、さまざまなビジネスのヒントが隠れている。(渡辺淳悦)

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山口哲一著
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1540円(税込)

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