電子コミックの伸び、急速に鈍化「成熟期に入った」 2022年の出版市場、4年ぶり前年割れ

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   2022年(1~12月期累計)の紙と電子を合算した出版市場の規模(推定販売金額)は、前年比2.6%減の1兆6305億円と、4年ぶりに前年実績を下回った。出版業界の調査・研究をする出版科学研究所(東京都新宿区)が2023年1月25日に発表した。

   なかでも、電子出版市場は前年までの2割前後の伸びから、22年は急ブレーキがかかり、伸び幅が一気に縮小。これまでは電子出版の伸びが紙の出版物の落ち込みをカバーしてきたが、それが崩れた。

  • 電子出版市場、22年は急ブレーキに(写真はイメージ)
    電子出版市場、22年は急ブレーキに(写真はイメージ)
  • 電子出版市場、22年は急ブレーキに(写真はイメージ)

巣ごもり需要が一服、物価高で買い控えも

   出版市場が縮小した要因について、出版科学研究所は2020年、21年に市場を支えてきたコロナ禍の「巣ごもり特需」が完全に終息。またロシアによるウクライナ侵攻などをきっかけとする物価の高騰も、趣味や娯楽品の一つである出版物の売れ行きに影響し、買い控えが起こったとみている。

   紙と電子を合算した出版物の推定販売金額は、2022年に1兆6305億円で、4年ぶりのマイナス成長となった。その内訳をみると、紙の出版物(書籍・雑誌合計)は前年比6.5%減の1兆1292億円と、1兆2000億円を下回った。書籍が同4.5%減の6497億円、雑誌が同9.1%減の4795億円だった。

   同研究所によると、書店の店頭実勢はこの数字よりさらに厳しいとみられ、書籍はいったん改善傾向にあった返品も、さらなる改善は進まなかったという。

   書籍は、これまで好調だった文芸書や児童書、学習参考書、資格試験などの売れ行きが鈍化。また、22年に一番売れたベストセラー本「80歳の壁」(和田秀樹著、幻冬舎)の発行部数が60万部弱と年々規模が小さくなったことや、ヒットする本がシニア頼みになっていることも紙の出版市場に陰を落とす。

   一方、雑誌では、月刊誌(コミックス、ムック含む)が前年比9.7%減の4017億円、週刊誌が同5.7%減の778億円となった。

   月刊誌の大幅なマイナスは、コミックスが2ケタ減と大きく落ち込んだのが要因だ。2020年の「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴、集英社)、21年の「呪術廻戦」(芥見下々、集英社)と「東京卍リベンジャーズ」(和久井健、講談社)の大ヒットと比べると、ヒット作の数も部数規模も及ばなかったことが響いた。

減少に転じた電子書籍、電子雑誌は2ケタ減

   出版科学研究所が2022年の出版市場の規模が発表した当日、KADOKAWAが発行する、1982年の創刊以来40年の歴史をもつ老舗のテレビ情報誌「週刊ザテレビジョン」が、3月1日発売号をもって休刊することが決まった。

   今後は「月刊ザテレビジョン」と統合を図り、同24日からは新たにリニューアルされるというが、近年はインターネットの普及とともに、紙の出版物が発行部数を減らし続ける傾向に歯止めはかからない。

   一方、これまで2ケタ増を続けてきた電子出版市場は、2022年に前年比7.5%増の5013億円となった。統計を開始した2014年が1144億円だった電子出版市場は、わずか8年で約4.4倍の市場に成長したことになる。

   しかし、内訳をみると、電子コミックは同8.9%増の4479億円とプラス成長を保ったものの、電子書籍は同0.7%減の446億円、電子雑誌は同11.1%減と2ケタ減に落ち込み、88億円にとどまった。 J-CAST 会社ウォッチ編集部の取材に、同研究所は「2022年は急ブレーキがかかり、伸び幅が一気に縮小しました。なかでも、電子コミック(の大幅な減少)が響きました。新たなユーザーも見込めなくなってきて、電子出版市場はいよいよ成熟期に入ったようです」とみている。

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