伸びるオンライン証券
第2章「急変する市場構造」では、オンライン証券5社の純利益の合計(761億円)が、初めて野村證券(714億円)を逆転したこと、口座数争いでは、楽天証券が初めてSBI証券を抜いたことを特筆している。
楽天証券の追い風になったのは、「つみたてNISA」だ。低い手数料が若年層の支持を集めたようだ。「1000億円をかき集めても年間3400万円の実入りがあるにすぎない」そうだが、それでも精力的に取り組んでいるのは、電子商取引やモバイル通信を主体とする楽天グループの全体戦略の一環だ、と見ている。
金融庁の発表によると、2022年3月末で30代の国民のうち12.4%が楽天をはじめ、どこかの証券会社につみたてNISAの口座を持っているというから、預金一本鎗だった日本人も変わり始めたのかもしれない。
オンライン証券の躍進に危機感を強めた対面営業の証券会社も動き出した。最大手の野村グループは、LINEグループと共同で設立したLINE証券を活用し、顧客の若返りを図ろうとしている。LINE証券の口座数は急増し、オンライン大手5社の一角に食い込もうとしている。
もう1つ興味深いのは、「ロボアド残高1兆円に」という項目だ。コンピューターが打ち出す質問に答えていくと、ロボットが自動的に、適切な運用ポートフォリオを組んでくれるロボアドバイザー(ロボアド)のサービスを利用する若年層が増えているらしい。残高に対する手数料が1%程度と低いのが人気で、残高は1兆円に達する勢いだ。
とはいえ、証券ベンチャーの大半は赤字で、苦境に陥っている。オンライン大手5社の牙城をなかなか崩せないからだ。