Z世代なる言葉を最近各所でよく耳にします。Z世代とは、1995年~2010年に生まれた人たちのことを指して言うのだそうです。
年齢で言うと、現在13歳~28歳。中学生から20代後半までの、今の若者世代と定義することができるでしょう。大手企業などはこのZ世代というくくりを用いて、その年齢層の特性を解析することで、今時の若者世代をターゲットとした商材のマーケティング戦略に活かしていると聞きます。
Z世代重視の観点は、組織マネジメントでも重要
Z世代があるということは、当然、それに連なる別のくくりもあるわけで、彼らよりも前の世代をさかのぼり順にY世代、X世代という世代分類が存在します。Y世代は、1980年~1994年生まれ、X世代はさらにさかのぼって1965年~79年生まれの人たちをそう名付けているのです。
このようなくくりは、各世代の成長過程で接する主要メディア違いと、その関わり方が大きく異なることから、その行動特性に顕著な違いが表れ、マーケティング的視点での「攻め方」の違いを明確化する目的で生まれたもののようです。
ちなみに、X世代はカラーテレビ、新聞、雑誌などを主な情報源として育ったアナログ世代。大人になっていく過程において、徐々にデジタル媒体との付き合いが始まった世代です。
Y世代は基本的には、彼らが生まれた段階でデジタル機器がある程度揃いつつ、その成長と共にデジタル化も進んでいった初期のデジタルネイティブ世代です。
一方、今話題のZ世代は、物心ついた時点で、すでにPC等の最新OA機器が当たり前に存在。そして、ネット環境で何でもできる今に近い状態を当前として育った完全デジタルネイティブ世代のことです。
Z世代がことさら話題になっているのは、ここがこの先20~30年を見通した時に消費のボリュームゾーンになる世代であり、この層を捕まえることが各市場において今後の主導権を握る鍵となるからに他なりません。
となれば、Z世代重視の観点は、単にマーケティング領域だけでなく、組織マネジメントにも活かされるべきではないのか、ということにもなるわけです。
すなわち企業経営の立場からは、今後組織の中核を担いリードしていくであろうZ世代のモチベーションをいかに上げ、求心力を高めるか――。Z世代の特性を理解して、これを上手に活躍させるよう腐心することが重要であると思うのです。
飲み会に誘っても「Z世代は全くつれない」...常務氏は涙目?!
今の企業における経営層は、ベンチャー企業を除けば、多くはX世代あるいは、それよりもさらにひと世代前の前X世代の人たちが大半でしょう。
私などはこの前X世代に属するわけなのですが、X世代との違いは、物心ついた時に、家庭内にあったテレビが白黒かカラーかぐらいのもの。ですので、X世代であれば十分相互理解が可能なのですが、デジタルネイティブであるY世代や、さらにそれに連なるZ世代となると、そうはいきません。
もはや、彼らが何を求め、何を良しとするのかは、古い世代からは適切にはつかめない、というのが正直なところなのです。
先日、私と同い歳のさる上場製造業の常務氏と話をしていて出た話題がまさに、Z世代とのジェネレーション・ギャップの問題でした。こんな話をしていました。
「コロナ禍で今や社内の飲み会は皆無になったのだが、恐らくZ世代の若手連中はこれを喜んでいるわけです。『飲みニケーション』という昭和のサラリーマン文化を、彼らは受け入れてくれませんから。それが通用したのはX世代まで。Y世代は受け入れてはいないものの、仕方なしに時々付き合うことはしてくれた。ところが、Z世代は全くつれない。『飲みに行くか!』と声かけようものなら、躊躇なく『結構です!』と返されますから(笑)」
ゼロ・サムではっきりモノを言う、デジタル世代の彼らしいエピソードです。一方で、Z世代をうまく捕まえている、旧世代リーダーも現れているそうで。大企業においても執行役員や部長というリーダー層が出始めたY世代の中には、旧来のリーダーとは違うやり方で、Z世代の気持ちを上手に捕まえている強者もいるのだといいます。
40代最年少部長が、わずか半年で鉄壁のチームワークを作り上げた!
「うちの40代前半の最年少部長は、今様のコミュニケーションでZ世代部下をしっかり捕まえています。彼は、オフ・コミュニケーションの場を、X世代以前のように、飲み会への参加を求めることはしません。その代わりに『チームビルディング・ウォーク』なるものを企画し、事前に社長の了解を取って、平日の勤務時間にメンバーを引き連れて高尾山で山歩きをするのです。これがZ世代にはウケるそうで。達成感の共有がチームワークの醸成に大いに役立つのだと彼の弁ですが、事実、就任半年で鉄壁のチームワークを作り上げています」
「飲みニケーション」から「チームビルディング」へ。たしかに、昭和にはなかった耳触りのよさもそこには感じられます。いずれにしても、私にとっては、デジタルネイティブ世代、恐るべしです。Z世代の戦力化が求められる今に時代に、「もはや老兵は去るのみ」を実感させられる話です。
折も折、EV化の流れで大激変期を迎えている自動車業界で、トヨタ自動車の豊田章男社長(66)がひと回り以上も若い佐藤恒治執行役員(53)に社長のイスを譲るとのニュースには、去りゆく旧世代を強く感じさせられた次第です。
ジェネレーション・ギャップという言葉は昔からありますが、このようにX、Y、Zで仕切られる今様の世代間ギャップの大きさは昔の比ではないと断言できるでしょう。X世代以前の経営者はその認識を十分に持って、いかに早期にZ世代の活躍を促すか。業種を問わず、2030年に向けた重要な経営課題のひとつに思えます。(大関暁夫)